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クロスキャット 「コラボレーションハブ」戦略で付加価値創造
2018/05/31 09:00
週刊BCN 2018年05月28日vol.1728掲載
クロスキャットは、2020年度(21年3月期)を最終年度とする新たな中期経営計画(中計/18年~20年度)をスタートさせた。「Collaboration Hub 2020」と題する新たな中期経営計画では、クロスキャットがハブとなり、顧客やパートナー、異業種企業や株主を含むあらゆるステークホルダーと協創し、新たな付加価値の創造を推進していく方針。また、クラウド型勤怠管理ソリューション「CC-BizMate」で管理する勤怠情報の分析・活用による新たな展開の可能性なども探る考えだ。今年45年周年を迎える同社は、レガシーな事業にとどまらず積極的なチャレンジを行うことで、成長の青写真を描いている。
“変わる”ことに取り組む
システムインテグレータであるクロスキャットは、事業セグメントとして「システム開発」「BIビジネス」の二本柱でビジネスを展開してきた。業種別では「金融」「公共」「法人」の三つ。現在、銀行やクレジット、保険といった金融と官公庁などの公共、とくに「レガシー」と位置づけるこれらの領域の売上比率は全体の7割ほどを占めている。法人領域では、業種や業務に特化せず、BI(DWH)など、新しいことにも取り組んでいる。「当社は今年で45周年を迎えるが、システム開発という部分がかなりのパーセンテージとなっている。これまで事業はSIとBIを手がけてきたが、次の3年間で大きく変わっていくのではないかとみている。決してレガシーな部分を辞めるということではなく、そこは引き続き行っていくが、もっと新しいことにチャレンジしていくということだ」と、井上貴功社長は力を込める。
実際に、17年度を最終年度とする3か年の前中計では「Innovation Fast 2017」を掲げ、新しいことに挑戦しながら、“変わる”ことに取り組んできたという。その成果として、17年度までの間に、クラウド型勤怠管理ソリューション「CC-BizMate」、働き方改革アプリケーション「CC-Smartシリーズ」、クレジット国際ブランド「CC-Quattro」、設備保全AR「CC-Factrevo/AR」といった「CCシリーズ」のソリューション製品群をラインアップ。「受託開発だけの会社から変わりたいという思いから、当社がもつ知見をベースにソリューションをラインアップしていきたいということで変化してきた」と井上社長は話す。
3か年を終えた手応えは、「(Innovation Fastというフレーズに対して)70%くらい。前3か年はレガシーの仕事にあたる金融機関系のシステムがカットオーバー迎える段階だったためドラスティックなことはあまりできなかったが、打って出るためのソリューションは揃えることができた。これを武器に、これからの3年を戦いに行く」と意気込む。
コラボレーションを推進
今後3か年の戦略を示した新中計では、「Collaboration Hub 2020」をキャッチフレーズとした。「17年度までの中計で変わってきたが、次の成長は自社だけで実現することは無理だろう。お客様やパートナー、学校、異業種の企業、地域社会や株主など、さまざまなステークホルダーとのコラボレーションを当社がハブとなって推進し、新たな付加価値を創造する」と井上社長は強調する。
コラボレーションハブの例として挙げるのが、ブロックチェーン技術をもつスタートアップのカウラ(岡本克司CEO)との協業だ。現在、両社はブロックチェーン技術を活用した新サービス創出を目指し、共同研究を進めている。また、クロスキャット自社内でも、今年1月から3月にかけて社内の各事業部からで若手を中心に10人を選抜し、カウラと共同でブロックチェーンのトレーニングを24回実施した。そのなかで学んだ結果として、「ブロックチェーンの導入企画を考えるためのテンプレートを用意したり、作業手順を示せるようなものを出せたりするといいのでは」などと検討しているという。
また、かつてクロスキャットの元社員であった社会保険労務士と組み、CC-BizMateのセミナー集客や講演なども行ったという。「これは偶然ご縁があってできたケースだが、他にもコラボしていることはある。専門家や得意なことをもっている方と組んでいきたい」としている。
さらに、BIビジネスを長年手がけてきたノウハウを生かし、「単なるレポーティングツールの提供ではなく、さまざまな情報活用のハブとしても存在感を発揮していきたい」と井上社長は語る。
勤怠情報を付加価値化
「CCシリーズ」では、クラウド型勤怠管理ソリューションのCC-BizMateも今後の成長戦略に欠かせない商材だ。
CC-BizMateでは、スマートフォン上から自身の予定の申請・閲覧、勤怠の打刻や残業申請、シフト確認などができる。また、残業分析機能では従業員の勤務状況を可視化し、残業時間の予測や36協定対策、長時間労働防止などに役立てることが可能。働き方改革の実現に向けても活用できるツールだ。
CC-BizMateはもともと、自社内で使っていたものを製品化したという由来がある。これまでの販売ライセンス数は1万3000ID以上。「価格が安く柔軟性も高いので、多様な雇用形態、勤務形態の従業員が多い企業にフィットする」(井上社長)。主に従業員数100人以下の企業の利用が中心だが、最近では「大規模導入の商談も複数進行している」そうだ。
「勤怠情報は会社のベースとなるデータの一つ。ここからさらに展開できることはたくさんあるだろう」と井上社長。CC-BizMateが管理している勤怠情報を使って、新たな価値の創出にも可能性を見出しているのだ。「例えば、CC-BizMateは、長時間労働を含めた時間管理や、勤務時間を管理会計としてみたときの、顧客にかける時間あたりの受注額なども含めた生産性をみたり、いろいろなものを絡めるとおもしろい。勤怠管理、時間管理で顧客と接点をもち、他社とのコラボレーションを含めて考えていきたい」と期待を示す。(前田幸慧)
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