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アフラックのシステムコスト削減戦略 「テスト工程」を標準化 費用全体の約50%を占める工程を約30%台へ圧縮
2018/05/17 09:00
週刊BCN 2018年05月14日vol.1726掲載
テスト工程を切り出して
徹底的に標準化
テスト工程のコスト削減に向けてアフラックが調べを進めていくうちに、「開発とテストを分ける手法は、米国では一般的に行われている」(アフラックの横山謙介・システム開発管理部システムテスト推進課課長)ことがわかってきた。左からNTTコムウェアの鈴木正則スペシャリスト、高橋邦治担当部長、諏訪原正樹担当課長
ただ、国内では設計から開発、テストを同一のベンダーが請け負うことが多く、「国内の開発手法にはテスト工程のみの切り出しは馴じみにくい」と、国内ベンダーを中心に消極的な意見が聞かれた。国内においても複数のSIベンダーがテスト工程のみを請け負うサービスを手がけている。しかし、ユーザーの大多数がそうした専門的なテストサービスを活用しているとは言い切れない側面もある。
アフラックでは、外資系を含む複数のベンダーに打診を行い、テスト工程の発注先の選定を行った。最終的に絞ったのは、設計・開発とテストを分けるノウハウをもつ欧米外資ベンダー、テスト工程の人材を多く抱えるアジア外資ベンダー、そしてテストに関する技術的知見にすぐれたNTTコムウェアの3社。
左からアフラックの川山相重課長代理、横山謙介課長、小木曽君予課長代理
テスト工程の切り出しは米国を中心に積極的に行われており、欧米外資ベンダーはこのノウハウをもっている。とはいえ、国内の開発ベンダーの何社かが忠告してくれた通り、米国のコンセプトをそのまま国内にもってきても「馴じまない可能性が高い」(アフラックの川山相重・システムテスト推進課課長代理)感触はあった。
このため、第三者の目線によるテストや品質評価レポートなどの「第三者検証サービス」を独自に手がけて、テスト工程に関する技術的知見を多くもつNTTコムウェアにも参加してもらうことになった。NTTコムウェアは4社の開発工程の発注先の1社でもあり、テスト工程の切り出しの打診を行ったときに前向きな姿勢を示したベンダーだった。
欧米外資ベンダーは、テスト工程の切り出しについて、主に米国でのノウハウを提供。NTTコムウェアは、米国での手法やコンセプトを具体的な手順書に落とし込んで、作業を標準化していく部分を担った。アフラックのシステム開発の規模の大きさを考えると、とてもこの2社だけではテスト工程を請け負いきれないため、豊富な人材を抱えるアジア外資ベンダーに協力を仰ぐフォーメーションを組むことにした。「三社が得意分野を持ち寄ることでテスト工程の切り出しをスムーズに行う」(アフラックの小木曽君予・システムテスト推進課課長代理)ことを狙ったものである。
第三者検証サービスで
培ったノウハウ生かす
テスト工程の切り出しに際しては、段階的に行うことにした。初年度となる2017年は全テスト工程のうち半分を開発から切り出し、16年までシステム開発にかかる費用全体のうち約50%を占めていたテスト工程を、約40%まで圧縮することを目標に掲げた。「ただ切り出すだけではコスト削減につながらない」(NTTコムウェアの高橋邦治・エンタープライズビジネス事業本部金融ビジネス部営業部門第一保険共済営業担当担当部長)として、NTTコムウェア自身が手がけてきた「第三者検証サービス」の知見をベースに標準化と効率化に取り組んだ。
NTTコムウェアの「第三者検証サービス」は、JSTQB(ソフトウェアテスト技術者資格認定)などの資格をもつテスト専門の技術者が中心となって行っている。開発ドキュメントをチェックし、設計段階から「効率的なテストが行えるかどうか」を確認したり、人海戦術が多かった総合テスト工程に対し、「ソフトウェアテスト技法を用いて効率的かつ効果的なテストを実施」(NTTコムウェアの鈴木正則・同部開発部門第一保険共済開発担当スペシャリスト)しているものだ。
テストストーリーを
共有して再利用する
アフラックのテスト工程についても、毎回、ゼロベースからテストを行うのではなく、「テストケース」や「テストストーリー」を標準化。テスト手法を再利用できるようデータベース化することでテスト効率を高めた。標準化の細かな作業はNTTコムウェアが中心となって行い、テストに使うツールなどとともに、テスト工程を請け負う3社で共有することで、「効率化やテストにかかるコスト削減」(NTTコムウェアの諏訪原正樹・同部開発部門第一保険共済開発担当担当課長)に役立てている。こうした事前の準備が奏功してテスト工程のうち6割ほどの切り出しに成功。初年度の17年は目標どおりテスト工程をシステム費用全体の約40%に圧縮することに成功。18年は同35%、19年は同30%台前半にする目標を掲げる。削減したコストの一部は研究開発に充てていく。例えばアジャイル開発や、開発と運用を一体化させるDevOpsでもテスト工程の切り出しを適用するなどの研究に取り組むことで、システム開発全体の効率化を加速させる。(安藤章司)
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