日本マイクロソフト(平野拓也社長)は、パブリックセクター事業でデザインシンキングの普及に注力する方針を明らかにし、日本政府が進める「Society 5.0」の先導役を果たしていく意向を示した。パブリックセクター事業本部長には、今年1月、SAPジャパンの公共・公益・通信統括本部長を務めていた佐藤知成氏が就任している。近年、SAPはデザインシンキングにもとづくイノベーションの知見・ノウハウを自社ソリューションとともに提供するビジネスに力を入れており、こうした背景にも日本マイクロソフトのデザインシンキングへの注力度合いがうかがえる。
平野拓也
社長
同社は4月18日、パブリックセクター事業の戦略をメディア向けに説明した。平野社長は、「マイクロソフトにとっては、自社が提供するインテリジェントテクノロジーを通して日本の社会にどう貢献できるかが大きなテーマ。日本政府は現在、Society 5.0を推進しているが、これはいわば超スマートな社会を目指しているということで、ITの役割は大変大きい。これはつまり、クラウド、AI、MRなどの多様な技術を包括的に提供できるマイクロソフトの役割も大きいということ。パブリックセクター事業では、Society 5.0の実現にどう貢献していくのかが主要な活動テーマになる」とコメントした。
佐藤知成
執行役員常務
パブリックセクター
事業本部長
一方、佐藤常務は、Society 5.0の実現に寄与するためには、公共領域の事業にもデザインシンキングにもとづいたイノベーションを根付かせていくことが重要であると訴えた。「デザインシンキングは人の生活をよくするために何が必要なのかを定義して、そこにどれだけ最短距離、短時間で近づいていくかが方法論として定義されているもの。公共分野のビジネスとは遠いものであるというイメージをもっている人もいるだろうし、私自身もそうだったが、政策を議論する場とテクノロジーの活用が隔離している状況があり、むしろここをつなげて社会課題を解決していくために有効なアプローチであると考えるようになった」という。デザインシンキングの適用が有効な公共ビジネス領域としては、マイナンバーを利用した新しいサービスの創出や、ライフイベントごとのトータルな行政手続きサービス、待ち時間の少ない医療サービス、地域医療連携などを挙げた。
公共分野にデザインシンキングを浸透させていくための具体策としては、4月に同社パブリックセクター事業本部内に「デザインジャパン推進室」を設置した。100人単位で人員を整備し、コンサルからマーケティング施策検討、ソリューション提案、プロトタイピングなどのサービスをシームレスに提供できる体制を整えるという。佐藤常務は、「パブリックセクター事業の国別売上高で日本は5位。デザインシンキングへの取り組みなどを通して、これからの5年間で(米国に次ぐ)2位まで押し上げたい」と目標を設定している。(本多和幸)