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可視化技術で多層防御を支援――キーサイト・テクノロジー
2018/05/07 09:00
週刊BCN 2018年04月30日vol.1725掲載
計測機器メーカー大手のキーサイト・テクノロジー(チエ・ジュン社長)は、ネットワーク可視化の事業拡大に力を入れる。ネットワーク可視化は、「主に多層防御を必要とする情報セキュリティの分野で幅広い応用が可能」(キーサイト・テクノロジーの安達吉信・イクシアソリューション営業本部営業本部長)と、伸びしろが大きいことを重視。可視化分野で主力製品となる同社の“パケットブローカー”を活用することで、ユーザー企業はネットワークの処理速度を落とすことなく、高度で多層的なセキュリティ性能を引き出すことができる。
安達吉信・営業本部長(左)と小圷義之・マーケティングマネージャー
不正なアクセスを防ぐため、ユーザー企業は不正侵入を検知する各種のアプライアンス機器、受け取ったプログラムの安全性を検証するサンドボックス、電子証跡管理のデジタル・フォレンジックなど、複数のセキュリティ関連機材を幾重にも設置。これによって多層的に防御するのが一般的となっている。
だが、多層的になればなるほどネットワークの負荷が多くなったり、処理能力を超えたことによるパケット落ちが問題になりやすくなる。そこで、同社ではデータの集約やフィルタリング、SSLで暗号化されたデータの復号化、各セキュリティ機器への最適な振り分けといった役割を担う“パケットブローカー”を設置することで、ネットワークの中身を可視化。「ネットワークの負荷を最小限に抑えて、各種多層防御の機器性能を最大限に引き出す」(小圷義之・イクシアソリューショングループマーケティングマネージャー)ことに役立てる。
ネットワーク可視化を巡っては、今年2月、情報通信研究機構(NICT)と共同で、「さっぽろ雪まつり」とシンガポールからの超高精細8K非圧縮ライブ映像配信を実現している。このライブ映像配信には、キーサイト・テクノロジーのパケットブローカー製品「Visionシリーズ」を活用。パケットブローカーがもつネットワークの分散/集約処理、フィルタリング、同一パケットを破棄する重複排除などの機能を応用した。
キーサイト・テクノロジーは2017年4月にネットワーク関連機器メーカーの旧イクシアコミュニケーションズをおよそ16億ドル(約1700億円)で買収。今年2月に企業統合の作業を終え、旧イクシアの事業であるネットワーク可視化やネットワーク計測などを“イクシアソリューション”としてグループに取り込んでいる。
イクシアソリューション群の直近の売上構成比をみると、ネットワーク計測関連がほぼ3分の2、ネットワーク可視化関連が3分の1を占める。前者はネットワーク機器メーカーや通信キャリア、データセンター事業者など、販売対象が絞られる傾向があるが、後者は一般企業のセキュリティ需要を中心に、幅広い需要が見込める。
今後は、アマゾンAWSなどクラウド対応も一段と進めていくことで、イクシアソリューション事業の国内での売り上げを向こう数年で倍増。そのうえで、ネットワーク計測とネットワーク可視化の売上構成比をほぼ半々にもっていくことを念頭に置いている。(安藤章司)
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