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働き方改革で東京五輪に焦点――BTジャパンとネットワンシステムズ
2018/03/08 09:00
週刊BCN 2018年03月05日vol.1717掲載
ネットワーク構築に強みをもつBTジャパンとネットワンシステムズは、「働き方改革」を切り口としたビジネスに力を入れている。BTジャパンは2012年のロンドン五輪の経験を生かして、東京五輪の開催時に混雑が予想される首都圏での生産性を落とさないための提案を行う。ネットワンシステムズは残業時間を3分の1近くまで減らしても営業利益率の水準を維持。生産性を高めてきた自らの経験と実績にもとづくコンサルティングサービスを重視している。両社はこれら強みをベースにビデオ会議システムや仮想デスクトップなどの商材を展開することで、働き方改革関連ビジネスを一段と伸ばす考えだ。
ロンドン五輪の経験を生かす
働き方改革ビジネスを巡ってBTジャパンは、テレワーク関連を中心にビジネスを伸ばしている。通信ネットワークの強みを生かすとともに、米ドルビー社と協業で開発したノイズ低減機能つきの音声会議システムなどの商材への引き合いが好調に推移。17年の引き合い件数は前年度比で3割ほど伸びており、「今年はもっと伸びる可能性が高い」(BTジャパンの吉田晴乃社長)と手応えを感じている。BTジャパンの吉田晴乃社長(右)と
英BTのケビン・テイラー アジア太平洋・中東・アフリカ地域プレジデント
ノイズ低減型の音声会議システムは、12年のロンドン五輪のときのヒット商品だ。当時、五輪開催によるロンドン市内の混雑を避けるため、自宅や郊外のオフィスで勤務する動きが活発化。とりわけ自宅から取引先や顧客と電話会議をするとき、子どもや犬の声が入らないようにするノイズ低減機能は、ユーザーから高く評価された。
東京五輪の開催に向けて、東京でも混雑緩和のために一部企業で在宅勤務や郊外オフィスの活用を推進する動きがみられる。英BTのケビン・テイラー・アジア太平洋・中東・アフリカ地域プレジデントは、「五輪をきっかけに働き方改革を一層加速すべき」と、ロンドン五輪の経験を踏まえたうえで提案する。オフィス中心の働き方から、オフィスに通勤しなくてもITを活用することで生産性を高める手法だ。
こうすることで女性がより働きやすくなったり、首都圏への一極集中を抑制して、地方経済の活性化につなげたり、「東京五輪ののちにも経済成長が続けられる基盤となる」(テイラー・プレジデント)と指摘。女性活躍推進や地方創生は国の政策による後押しもある。
ネットワンシステムズの下田英樹部長(右)と手塚千佳マネージャー
吉田社長は、日本経済団体連合会(経団連)の審議員会副議長・女性の活躍推進委員長を務めており、昨年11月には経団連の活動の一環として「女性の活躍推進による成果・ビジネスインパクトの先進事例集」を制作。飲料・食品、家電・美容、商業施設・オフィス、金融、製造といった個別企業の女性活躍による具体的な成果を数字であきらかにしているのが特徴だ。「女性活躍を効果的に推進することで、どれだけ売り上げや利益が増えたのかを実感してもらうのが目的」(吉田社長)だと話している。
経団連で制作した「女性の活躍推進による成果・ビジネスインパクトの先進事例集」
就労人口の減少速度を緩めるには、長時間残業をなくすことや育児・介護による離職を抑制し、なかでも女性が活躍しやすいよう改革することが欠かせない。これにはITを一段と活用した働き方改革を推し進めなければならず、BTジャパンはここに大きなビジネスチャンスを見出している。
顧客経営層との接点を増やす
ネットワンシステムズは、働き方改革ビジネスで顧客企業の経営層との接点がより増えている。ネットワーク構築に強い同社は、高度に専門的な技術を売りにしているだけに、顧客企業の情報システム部門がビジネスの窓口になることが多かった。だが、働き方改革に関しては、トップダウンで進めていくほうが効果的と判断。そこで今年度(18年3月期)からは本格的に立ち上げたコンサルティング部門の「ワークスタイル変革チーム」を中心として、顧客経営層との接点拡大を推し進めている。顧客先へのコンサルティングの根拠となるのが、ネットワンシステムズ自らの働き方改革の経験にもとづくものだ。同社にとって働き方改革の転換点になったのが13年度。残業時間の抑制や在宅勤務の促進、出産などに伴う離職者数もほぼゼロにしてきた。
なかでも効果が大きかったのは、残業時間の抑制。12年度の一人あたりの平均残業時間が21.7時間あったのに対して、13年度はほぼ半減。16年度は8.8時間と3分の1近くに削減した。その一方で全社の営業利益率の水準はおおむね維持しており、「時間あたりの生産性を向上できた」(ネットワンシステムズの下田英樹・経営企画本部人事部部長)と自負している。17年11月には、一連の働き方改革や、ITを活用した地方での業務環境を整備し、地方創生に貢献したとして、総務省「テレワーク先駆者百選・総務大臣賞」を受賞した。
顧客企業向けの主力商材となるのが、仮想デスクトップ(VDI)やビデオ会議システム。また、これらのアプリケーションを支えるためのセキュリティやネットワーク基盤も重要商材となる。ネットワンシステムズ自身もこうしたIT基盤を導入しており、「自社の経験を生かして顧客への提案活動を強化」(手塚千佳・ICT戦略支援部ワークスタイル変革チームマネージャー)している。
働き方改革ビジネスを担当する手塚マネージャー自身も、二人の子どもを育てながら最新のITシステムを駆使して生産性を高めてきた一人。「向こう3年で働き方改革関連のコンサルティングサービスの売り上げは直近の10倍に、システムを含めた売り上げは5倍に増やしていく」(同)と鼻息が荒い。これも手塚マネージャー自らがオフィス中心の従来型の働き方を変革。ワークライフバランスを維持しつつ、在宅勤務やビデオ会議を駆使して生産性を高めてきた自信に裏づけられているものだ。(安藤章司)
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