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AI事業の第一弾をリリース――システムインテグレータ
2018/01/24 09:00
週刊BCN 2018年01月15日vol.1710掲載
ソフトウェア開発ベンダーのシステムインテグレータ(梅田弘之社長)は、人工知能(AI)を使った事業の第一弾として、業務ソフトウェアや電子商取引(EC)サイトの画面を認識し、設計データを逆生成するAIサービスを3月7日から提供する。最近では、アジャイル開発やスピード重視のソフト開発が浸透し、設計書を作成しないケースが増えた。一方で、システム管理者は、保守・改修などのメンテナンスに備え、設計書をもっておきたいが、容易に作成できない悩みを抱えている。同サービスは、「実際の画面から設計書を逆生成する」という部分で特許出願中だ。ソフト開発・メンテナンスの課題を解決する手段として期待が高まりそうだ。(取材・文/谷畑良胤)
レガシーメンテに有効
梅田弘之
代表取締役社長
同AIサービスは、画面からオブジェクト(設計部品)を検出し、部品の種類や文字、画面上の位置を認識するほか、取得した情報をもとに設計データを生成する。この連続した処理で実際の画面から設計データを逆生成する。画面認識ではAIを活用している。
位置認識では、汎用プログラミング言語「Python」を使い同社がオリジナルで開発した技術で、トップ・レフト座標をピクセル検出する。また、部品認識は、Googleの「Tensor Flow」を利用し、値を入力するテキストボックスや選択に使うボタンなどを検出し分類する。文字の認識は、同じくGoogleの「Cloud Vision API」を利用して、各コントロール内の文字列を取得する。梅田社長は、「従来は、Excelなどで設計書や定義書を作成した。だが、カスタマイズを繰り返した場合、過去のExcelからメンテナンスに必要な設計書を生成するが、時間がかかる」と、同サービスがこの問題を一挙に解決し工数削減や開発現場の効率化に役立つと自信をみせる。
一般的にアプリケーションは、スクラッチ開発でもパッケージでカスタマイズしたものでも、コントロールと呼ぶ部品で構成している。部品には、値を入力する「テキストボック」や説明文字の「ラベル」などが存在。多くの企業で使われているアプリは、カスタマイズを繰り返し実物と異なる場合が多く、確かな設計書がないとメンテナンスに困る。一方で、同AIサービスは、こうした設計や保守工程など“守り”の開発工程に活用できるだけでなく、紙にスケッチしたシステムのイメージ画像を同AIサービスに送信すると各部品の要素を検出できる。
そのため、既存のウェブサイトやアプリのモックアップ(HTML)の生成にも役立つ。レガシーシステムは設計書がない場合が多く、メンテナンスに苦労する。同AIサービスを使えば稼働中のシステム画面の情報をもとに最新の設計書の生成が可能だ。抽出・判定した設計データは、外部利用を容易にするためJSON形式で出力できる。
紙データを電子化用途へ拡大も
鈴木敏秀
取締役Object Browser
事業部長兼
マーケティング部長
同社には、アプリを設計するCADツール「SI Object Browser Designer(OBDZ)」があるが、これとAIサービスをシームレスに連携させ、設計情報をもとにメンテナンスを機能的に行うことができる。同AIサービスは、2018年度(19年2月期)から3年間で約3億円、「SI Object Browserシリーズ」全体で約15億円の売上高を見込んでいる。
国内企業の情報システムは、レガシーシステムが重荷になり近代化が遅れているとされる。レガシーシステムを扱える人材不足も深刻だ。同AIサービスは、クラウドサービスのボリューム課金型での提供を予定している。そのため、少額予算で、レガシーシステムの入れ替えや、メンテナンスの立て直しのための設計書を生成し、実際の運用に備えるための準備が可能だ。
企業システムを設計・開発するSIerにとっては、逆生成した設計書から課題を抽出し新たなシステム提案ができる。梅田社長は、「当社は今後、AIに注力する。今回のAIサービスはその一つにすぎない」と、ERP(統合基幹業務システム)開発など、複雑なソフト開発に実績のある同社だけに、システム設計・開発や、AIを活用した新機軸のサービスが登場しそうだ。
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