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アリババの祭典 2017 杭州・雲栖大会 クラウド事業の成長を強調
2017/12/21 09:00
週刊BCN 2018年02月26日vol.1716掲載
技術力で世界トップ目指す
「IBM、マイクロソフトを超える」と馬会長
アリババグループは、技術力で世界のリーディングカンパニーとなることを目指す。「2017 杭州・雲栖大会」では、新たに研究開発(R&D)プロジェクト「アリババ達摩院(Alibaba DAMO Academy)」を発表した。今後3年間で研究開発に1000億元(約1兆7000億円)超を投資。グローバルに実験室を設け、革新的な技術の創出につなげる。「アリババ達摩院」では今後3年で1000億元を投資
アリババ達摩院では、まず中国の北京、杭州、米国のカリフォルニア州サンマテオ、ワシントン州ベルニュー、ロシアのモスクワ、イスラエルのテルアビブ、シンガポールの7か所に実験室を設立。院長には、アリババグループの張建鋒・首席技術官(CTO)が就任する。世界各国から100人の科学者や研究員を引き入れ、ビッグデータ、IoT、FinTech、量子コンピューティング、人工知能(AI)などの分野で研究開発を推進する。
企業や教育・研究機関とも連携。例えば、カリフォルニア大学バークレー校とはリアルタイムコンピューティングの分野で、中国科学院とは量子コンピューティングの分野で協力する。中国工程院の院士や、コロンビア大学、ハーバード大学などの著名な教授も達摩院に参画している。研究で得られた成果は、将来的にクラウドサービス「阿里雲(アリババクラウド)」を通じて企業に提供していく。
馬雲 会長
クラウドサービス「阿里雲」は、着実にグローバルIT大手との差を縮めてきている。米ガートナーによると、16年の世界パブリッククラウド(IaaS)市場で「阿里雲」はシェア3.0%を獲得し、米グーグルを超えて3位につけた。売上高の前年比成長率は126.5%で、上位5社のなかではもっとも業績を伸ばしている。「雲栖大会」で記者会見した阿里雲の胡曉明総裁は、「部分的なプロダクトはすでにAWSをリードしている」と述べ、自社の技術力に自信をみせた。15年にクラウド事業の海外展開を本格化させた際、AWSとの関係について「真っ向から競争するものではない」(喩思成 副総裁)との姿勢を示し、競合視を避けていたのとは対照的な発言だ。
今年に入って、「阿里雲」はマレーシア、インドネシア、インドなど、新興国が多いアジア地域を中心にデータセンター(DC)の設立を進めている。アジア地域は、北米や日本などの先進国と比べ、パブリッククラウドの市場勢力図が確立されていないため、商機は大きい。今後数年間で、さらにアリババが勢力を拡大する可能性が高い。
アリババクラウド
AWSを追い上げる 胡総裁が競争姿勢示す
中国最大のクラウドサービス「阿里雲(アリババクラウド)」を手がける阿里雲計算の胡曉明総裁は、「2017 杭州・雲栖大会」で海外メディアのインタビューに応じた。15年の北米データセンター(DC)の開設以降、グローバル展開を本格化し、各地で体制を強化している同社。胡総裁は、「Amazon Web Services(AWS)」などグローバル大手との競争に挑む姿勢を示した。――世界のクラウド市場をどうみているのか。
胡曉明
総裁
一方、グローバルの観点からみれば、依然として最も発展しているのは、やはり米国のクラウド産業だ。中国はインターネットの応用面では進んでいるが、基礎理論などの科学力全体では、米国のシリコンバレーなどに軍配があがる。しかし、中長期的には中国が米国と同様に世界のクラウド産業をリードしていくと確信している。
グローバル化によって、中国のクラウドベンダーには、必ずチャンスが訪れる。グローバル化を進めないとすれば、将来、中国のクラウドベンダーに商機はない。
――現在の阿里雲の立ち位置については、どう認識しているのか。
胡 米ガートナーの報告によれば、世界のクラウド(IaaS)市場で上位4社は、AWS、マイクロソフト、阿里雲、グーグルの順だ。中国企業の海外進出や海外企業の中国進出に伴い、われわれはグローバル化の発展トレンドを迎え入れ、各国・地域でDCの設置を進めている。しかし、整備してすべてを完成させるには、多くの時間が必要だ。だから現在、マレーシア、北米、欧州、シンガポールなどでローカライズを進めているところだ。
――トップベンダーのAWSに打ち勝つことができるのか。
胡 この3年間で、われわれのサービスは全面的にAWSを追い上げ、部分的なプロダクトはすでにAWSをリードしている。グローバルの競争に参入するなかで、展開していく過程さえ除けば、阿里雲の基本的な能力はAWSに劣るものではない。
一方で、規模の観点に立つとすれば、AWSは見習うべき存在といえる。3年前のAWSの(売上高)規模は阿里雲の38倍あったし、いまでも10倍以上の開きがある。しかし、私は阿里雲がもう一歩前進することを信じている。われわれの成長スピードは、まず自らに学ぶ機会を与えてくれる。そして、中国企業のグローバル化とアリババグループのエコシステムが、われわれに発展の機会をもたらしてくれる。
世界中から前途有望なスタートアップが集結
アリババがスタートアップコンテスト開催
阿里雲計算は、「2017 杭州・雲栖大会」の開催に合わせて、10月13日、14日、年次イベント「Create@Alibaba Cloud Startup Contest(CACSC)」の決勝戦を上海・張江ハイテクノロジーパークで開催した。スタートアップコンテストである本イベントには、世界中から45の企業が参加。優勝を目指し、自社の強みを披露した。今大会には世界中から45社のスタートアップが参加。
自社独自のソリューションやビジネスモデルを発表し、審査員をうならせた
CACSCは、アリババクラウド主催で2015年から年次で開催しているスタートアップのビジネスコンテスト。世界各地域で先んじて開催された予選を突破した猛者が決勝戦に集う。
今大会では、世界13か国25都市2000社以上の応募のなかから予選を勝ち抜いた45のスタートアップ企業が出場。人工知能やビッグデータなどの先端技術を活用したソリューションや、オリジナルのウェアラブル端末などのハードウェアを紹介した。日本からは、自動車やドローン、ロボットといったモビリティIoT機器の管理・診断・解析プラットフォームを開発するPSYGIGが出場。
優勝したのは、米ニューヨークから参加したHistoWiz。13年設立のスタートアップで、がん研究者向けに組織サンプルを預かり、3日以内に分析してクラウド上に結果を表示・保管するがん診断サービスを提供する。今回、同社のビジネスコンセプトや商業的な可能性が審査員に評価された。今後は、アリババクラウドのあらゆるリソースを活用して、事業拡大を図ることが可能になる。Ke Cheng CEOは、「優勝できるとは思っていなかった。非常に感謝し、感動している。中国市場を切り開く大きな一歩となった」と語った。
企業のプレゼンテーションの合間には、ダンスや舞いといった演目をはさみながら進行し、観客を楽しませた。イベント全体を通してたくさんの来場者が訪れたが、とくに初日、冒頭にアリババグループの劉松副総裁、上海張江集団の袁涛董事長、張江管委会の呉強・党組書記らが壇上で挨拶を行った際は、座席から溢れるほど大勢の報道陣、観客がつめかけ、イベントの注目度の高さがうかがえた。なお、来年の本大会は中国・杭州で開催を予定している。(前田幸慧)
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