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<Special Interview>働き方改革 トップランナーに学べ! 働き方改革は、生き残るために必要だった
2017/11/02 09:00
週刊BCN 2017年10月30日vol.1700掲載
小柳津 篤氏
日本マイクロソフトは、国内の働き方改革のトレンドをリードしている存在といえよう。2014年から3年間、多くの企業や地方自治体などと連携して「テレワーク/働き方改革週間」を開催したほか、今年4月には「働き方改革推進会社ネットワーク」の立ち上げを発表し、日本社会に働き方改革のムーブメントを起こしていくコミュニティ活動を主導していく方針を示している。同社が働き方改革を支援するITプロダクトのベンダーであることはいうまでもないが、同社自身がこれまで率先して働き方改革を実践し、その意義や効果を証明してきたことも、こうした取り組みの大きな推進力になっている。日本マイクロソフトの働き方改革に長年取り組んできた小柳津篤・マイクロソフトテクノロジーセンターエグゼクティブアドバイザーに、「マイクロソフト流働き方改革」について聞いた。
2011年のオフィス移転が転機
――まずは、マイクロソフト自身がこれまで進めてきた働き方改革の歴史について。われわれが考えていたのは、いつでも、どこでも、誰とでも交流できるような働きやすい環境を整え、仕事の生産性を上げるということ。移転直後に東日本大震災が起き、これは災害時の事業継続にも有効だとわかった。このあたりから、テレワークのツールなどを毎日使いこなすという文化が真に社内に浸透していった。
もがき苦しみながら失敗と試行錯誤の連続で積み上げてきたノウハウは、当社自身の提案活動にも生きている。多くの日本のお客様は、提案されたソリューションが実践・実証されたものかどうかに大きな関心をもっている。
――安倍政権の働き方改革の施策や電通事件の前から取り組んでいるということになる。
小柳津 何のために働き方改革をそんなに以前からやってきたかというと、答えはシンプルで、生き残るため。これだけ競争や変化が激しいグローバルハイテク市場のなかで、どうやったら生き残れるかということを考え、効率がよく、生産性が高く、イノベーティブで持続可能な働き方を模索した結果、いまのような状態になったということ。働き方改革は大ブームだが、労働時間の削減などは本来働き方改革の手段であり、これを目的としてしまってはもったいない。
ベンダーの提案はリアリティが大事
――企業経営を向上させるための働き方改革といっても、どう取り組めばいいかわからない企業も多いのでは。小柳津 もちろん、具体的な施策が必要で、当社はその知見も積み上げてきた。まず重要なのは、いつでも、どこでも、誰とでも交流できる働き方が、とても便利に、ストレスなくできること。これがたどたどしくしかできないとか、大変な思いをしないとできないというようでは浸透しない。
さらに大事なのはリスクコントロール。いつでも、どこでも、誰とでも交流できるようになることで生まれるリスク、例えば情報漏えいや労働強化から会社が守ってくれるという安心があると、働き方改革のための便利なITツールを使わない理由がなくなる。
当初われわれはここを勘違いしていて、労務管理や情報管理が安心安全というレベルに到達する前に、かっこいいオフィス空間をつくったり、高額なテレビ会議システムを入れたりしたが、結局さほど使われなかった。リスクコントロールが非常に厳しいからこそ、いつでもどこでも活躍できる環境が威力を発揮することを、実体験から理解した。
もう一つ大事なのは習慣化。効率性・利便性を担保するITソリューションと安心安全な労務管理、情報管理が揃っても、組織の習慣や価値観はそんなに簡単に変わることはできない。
いろいろなかたちでツールを試してもらって、その効果に気づいてもらって、使い続けてもらうための支援や啓発といった働きかけもしないといけない。これらの要素がすべて整ってはじめて、効率がよく、生産性が高く、イノベーティブで持続可能な働き方が実現できたと感じている。(図参照)
また、一つひとつの施策は、あくまでも全社的なto be 像に沿って取り組む必要があり、個別最適化を避けなければならない。だからこそ、経営者のリーダーシップが重要になる。
――日本マイクロソフトのパートナーを含め、ITベンダーが働き方改革をビジネスの成長につなげるために重要なことは。
小柳津 まずは自分たち自身が実践して成果を出した商材やサービスでなければ、お客様に伝わるメッセージは弱くなってしまう。働き方改革のソリューション提案でもっとも重要なのはリアリティだと、再度強く申し上げておきたい。
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