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ITbook アジャイル開発で民需開拓
2017/07/13 09:00
週刊BCN 2017年07月10日vol.1685掲載
中央省庁や自治体など、団体向けに実績のあるIT戦略コンサルティングサービス会社のITbook(伊藤元規社長)は、3年前に自社で構築したエンタープライズ・アジャイル開発「r.a.k.u.」と呼ぶ手法を用いて、食品や機械製造、製薬など民間企業の案件を増やしている。最近では、業務システムの最適化に向けた開発だけでなく、クラウドや人工知能(AI)、IoT(Internet of Things)などの技術を取り入れたビジネスモデルの提案も積極化している。
r.a.k.u.は、システム構築のウォーーターフォール開発やパッケージ導入のデメリットやユーザーの不満を解決するために開発したサービス。システム導入を目的とせず、顧客とビジネスの目標を共有し実現する開発手法。コンサルティング本部の定野淳シニアマネージャーは「顧客システムの現状分析から課題解決方法の検討、業務改善、システム構築・運用・保守に加え、システムの継続的改善などをワンストップで提供する」と、大手ITコンサル会社に対抗するため、安価で柔軟性の高い手法を開発したという。
通常は、要件定義をもとに、システムインテグレータ(SIer)などがシステム開発し納品する。だが、同社が提唱するr.a.k.u.は、企業のビジネスや業務は、永続的に成長することを前提につくられている。r.a.k.u.では、要件定義は変わることを前提にしてすべてを決めず、複雑なソースコードを極力書かずに、超軽量・簡易開発言語を利用してプログラミングを簡素化する。アジャイル開発を取り入れプロジェクトの終わりをゴールとしないとしている。
実際の開発では、顧客や社内外のシステムエンジニア(SE)と一つのスクラムを形成しプロジェクト管理している。定野シニアマネージャーは、「1か月ごとにシステムを部分的にリリースし、3か月ごとに引き渡し研修をする、というサイクルを繰り返す」と、システムのミスマッチを極力無くすよう、開発プロセスを顧客とチームで可視化している。
r.a.k.u.によるシステム構築では、最新の開発技術やアーキテクチャを多く用いている。ウェブアプリケーション開発では、「コンシューマITのような直感的にわかりやすいユーザビリティを実現し、体感レスポンス1秒以内を目指す」(定野シニアマネージャー)ため、「Single Page Web Applications」(SPA)というアーキテクチャを採用。オープンソースを積極的に使い汎用性と拡張性を高めている。
また、顧客のビジネスモデルを構築することなどを目的として、APIマネジメントにより継続性・保守性・変化への柔軟な対応を実現。複数システムのインターフェースとリアルタイムにつなぐ環境を提供している。マイクロサービスにより、サービス単位の修正ができるよう柔軟性にも配慮している。運用面では、DevOps環境を提供し、業務で運用と開発のオーバーヘッドを無くしている。
r.a.k.u.の開発で、民間企業向け売上高は、2017年3月期で前年度の2倍に成長した。実績としては、食品卸大手や機械製造など金融以外の産業の基幹系を含めたシステムなどだ。
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