ニュース
キヤノンITソリューションズ 基盤・セキュリティで成長領域築く
2017/05/31 09:00
週刊BCN 2017年05月22日vol.1678掲載
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、坂田正弘社長)の100%子会社、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS、神森晶久社長)は、グループ全体の独自成長領域である「基盤・セキュリティ」事業の中核企業として、自社と他社製品の融合や販売網の再構築など、セキュリティ関連事業の再編を進めている。3月下旬には、メールフィルタリングソフトウェア「GUARDIANWALL(ガーディアンウォール)」を総合情報漏えい対策ソリューションの統一ブランドに一新。パートナー企業がもつ製品を技術力でつなぎ、変化し続けるセキュリティ脅威に対応するため、ラインアップとサービスやサポートメニューを増やす。近く、新たなパートナープログラムを発表し、製品と販売両面で強化策を打ち出す予定だ。
セキュリティの新ブランドを全方位展開へ
キヤノンITSは3月、自社のセキュリティ製品群を再編成し、新ブランド「GUARDIANWALL」シリーズを立ち上げた。従来のGUARDIANWALLは、15年連続で国内トップシェアを誇るメールフィルタリング製品。これに加え、クラウド事業者や小規模企業向けの製品やサービスを統合し、主力のエンドポイントだけでなく、ネットワークやクラウドまで含めた新たなセキュリティの仕組みを新ブランドで実現することをねらっている。同社のセキュリティ製品といえば、セキュリティソフト「ESET(イーセット)」が知られている。GUARDIANWALLをこれに匹敵するブランドにし、他社の技術を組み合わせ、顧客個々のセキュリティ要求に即応できる体制を整え、独自成長領域の確立を目指す。
基盤・セキュリティソリューション
企画センター
崎山秀文
センター長
GUARDIANWALLシリーズの第一弾として3月下旬には、メールセキュリティに必要な機能を集約した「GUARDIANWALL Mailファミリー」の提供を開始。同製品群は、メール誤送信対策や添付ファイルの自動暗号化、万一の事故に際してのメール事後監査の3製品で構成されている。これに続く展開としては、4月にメール以外のコミュニケーション対策を支援するメール監査、標的型メール検知、メール無害化の各サービスからなる「GUARDIANWALL Cloudファミリー」を発売。今夏には、ウェブサービス向けのフィルタリング製品「GUARDIANWALL Webファミリー」の提供も計画しているなど、矢継ぎ早に投入していく。
戦略的なパートナーシップを拡充
現在、企業に求められるセキュリティ対策は、標的型攻撃対策やランサムウェア(身代金要求型ウイルス)に対するデータ暗号化、マイナンバー対策、内部不正対策など、多岐にわたる。こうした現状を踏まえ、「いままでは、キヤノンブランドを中心に単体ソリューションとして販売してきた。だが、最適なセキュリティを提供するうえで、当社に不足する技術をもつセキュリティ関連の独立系ソフト会社(ISV)などとの戦略的なパートナーシップが欠かせない」(崎山センター長)と、サードパーティとの連携も拡充する。例えば、サイバー・ソリューションズとは同社の不正接続検知・遮断のアプライアンス製品「NetSkateKoban(ネットスケットコーバン)」との機能連携を強化した。キヤノンITSのESETとの連携でウイルスを検出した端末をネットワークから切り離すことが可能だ。今年2月には、メール無害化/スパムメール対策/誤送信防止機能を統合したメールセキュリティ製品「SPAMSNIPER AG」について、開発元のジランソフトジャパンと国内独占販売契約を締結し、販売を開始すると発表している。このほかにも、UTM・次世代ファイアウォール製品のClavister(クラビスター)など、ネットワーク・セキュリティ機器メーカーとの直取引を拡大。企業規模を問わず提案できる体制を敷く。
崎山センター長は、「当社が製品の連携機能を開発し、販売は各パートナーの販売網を含め相互に拡販する」と、販売面でも既存・新規のパートナーと共創を進めていく考え。同社では今後、各種製品に加え、ぜい弱性診断やコンサルティングサービスにも注力する。
販売面では、従来もっとも売り上げをあげていたキヤノンMJの商流だけでなく、ディストリビュータや大手SIerとの連携を強化するため、自社内でチャネル別の営業専任者を拡充する。
情報通信研究機構(NICT)によると、2016年の1年間でサイバー攻撃関連の通信は約1281億件に達し、前年の2倍に増えた。同社製品のESETによる国内のマルウェア検出数も、15年7~12月と16年の同期を比べると3.8倍に増加するなど、脅威は増すばかりだ。一方、企業側では、セキュリティ人材が不足し、クラウドや仮想環境、IoT(Internet of Things)など、高度化するインフラのセキュリティにも目を向け対策を急ぐ必要があるが、有事などに備える準備が行き届いていない。
このため、同社は顧客の声をもとに各種製品を組み合わせ提供する「基盤ビジネス」部門と、セキュリティ製品の研究開発を行う「セキュリティビジネス」部門を統合。「より迅速に顧客の要望に応えられる体制にした」(崎山センター長)と、強調している。
製品、販売の両面で体制を一新した同社は、GUARDIANWALLブランドの確立を目指すほか、プロダクト、サービス、サポートを含め基盤・セキュリティ関連で、現在の2倍になる100億円の売り上げを20年度(20年12月期)までに目指す。そのうえで、高度な技術力をもつ販売パートナーやISVと収益をもたらす新たなパートナープログラムを構築する。自前主義から脱却し、自社の技術力で有力製品同士を“つなぐ”ことで、新たな成長領域を生み出そうとする同社に対し、セキュリティ関連製品を販売するITベンダーからの注目は高まっている。(谷畑良胤)
- 1