公共・金融分野でバックエンドのシステム開発に長く携わってきた信興テクノミスト(池野大助社長)は、ユーザーのビジネスの成長を支援するフロント側のシステム「SoE(Systems Of Engagement)」の領域で、ビジネスを本格的に拡大しようとしている。同社が重視しているのは、データ連携部分での独自商材を生かしたソリューション提案をしていくことだ。インフォテリアのEAI/ESB製品「ASTERIA WARP」のアダプタ開発を積極的に手がけており、最近では、ASTERIA WARPとPepperの連携アダプタも開発、リリースした。これを武器として、同社がこれまでリーチしていなかった小売りやサービス業といった業界向けに、マーケティング支援IoTソリューションなどを提案していきたい考えだ。
インフォテリア
熊谷 晋
ASTERIA事業本部長
インフォテリアが、ASTERIA WARPのアダプタ開発支援プログラムをスタートさせたのは、2015年7月1日のこと。プログラムに参画するISVやSIerに、他社パッケージソフトやデータベースなどとASTERIA WARPをつなぐ専用アダプタを開発してもらい、ASTERIA WARP経由で多様なデータリソースを広く活用できる世界を広げていこうという試みだ。信興テクノミストは、同プログラムに開始当初から参画している。インフォテリアの熊谷晋・ASTERIA事業本部長は、「最も多くのアダプタを開発してくれているパートナー」と同社を評価する。すでに、クラウド名刺管理サービス「Sansan」、CRM製品「クライゼル」、請求管理業務の自動化クラウドサービス「経理のミカタ」、そしてPepperと、4製品向けに専用アダプタを開発・リリース済みで、自社案件に活用しているほか、他のASTERIAパートナーに再販するケースも増えているという。
同社はとりわけ、Pepperアダプタについて、新しい分野の顧客開拓の主力となる製品として位置づけ、これを活用したソリューションの提案を強化しようとしている。滝口政行・システムプロデュース本部本部長は、次のように説明する。
信興テクノミスト
滝口政行
システムプロデュース
本部本部長
「Pepperは、人型ロボットならではのユニークなインターフェースをもつと同時に、非常に多機能なセンサなので、既存の業務システムやさまざまなクラウドサービスと連携させるなど、多様な活用方法が考えられる。例えば小売業の現場で、顧客の表情、音声、動作をPepperが対面で読み取り、吸い上げたデータを総合的に分析して、購買にいたるまでの感情の動きや思考のプロセスのようなものを可視化できれば、マーケティングや接客支援に非常に効果があるのではないか。そうすると、ユーザーからみたPepperは、『これまで数値化できていなかった情報を活用できる機械』になり、インパクトは大きい。ASTERIAを活用すると、複数台のPepperを同時に運用するときに非常に制御しやすいというメリットもあり、当社にとってPepperアダプタの活用ソリューションは、これまであまりアプローチできていなかった小売業、サービス業などの分野で新規顧客を開拓するための有効なフックになるだろう」。
同社は昨年9月、実技・筆記試験を経て、ソフトバンクロボティクスの「Pepperパートナープログラム」で、「ロボアプリパートナー(Basic)」の認定を取得している。フロント側のアプリケーション開発も含めて、Pepperアダプタ活用ソリューションの構築・提案体制を整えている。滝口本部長は、「業績を向上させるためのフロント系ソリューションでお客様のビジネスそのものに入り込んで、継続的に改善を加えながら長くおつきあいをしていくというモデルが、これからの当社の成長には不可欠だと考えている。その前提として、とにかく早く新しい施策をスタートさせたいというお客様のニーズにまずは応えていかなければならず、ASTERIAやASTERIAアダプタは強力な武器になる」と力を込める。また、インフォテリアの熊谷事業本部長も、「信興テクノミストのように、既存のSIの技術があるだけでなく、先行投資して新しい領域に踏みだそうとしてくれるパートナーがASTERIAの利用範囲を広げてくれるのは、当社のビジネスにとっても大事なこと。積極的に支援していきたい」と、同社の活動に大きな期待を寄せている。(本多和幸)