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<ASEAN>現地担当者に聞く「シンガポール集約型で勝負」
2015/02/05 18:55
週刊BCN 2015年02月02日vol.1565掲載
マネージング・ダイレクター
大野 修氏
AECの発足をきっかけに、シンガポール政府は世界の情報を集める「データハブ」としての位置づけを固めようとしている。シンガポールでは、法人税が低いなどのメリットがあることから、世界の企業はアジア地域のヘッドクオータ(HQ)機能をシンガポールに集約する動きに出ている。それを追い風に、クラウドをはじめとするITに関してのニーズが旺盛になりつつある。クラウドサービスを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)グループのシンガポール現地法人の経営トップを務める大野修氏にたずねた。
大野 シンガポールはこの20年の間、ずっと「バブル」が続いている。街は常に建設ラッシュに沸いていて、物価も急速に上がってきた。今や、シンガポールの物価は世界No.1だろう。政府は成長戦略として、新しい取り組みに積極的な姿勢を示し、直近では、観光の強化や「データハブ」の構築に力を入れている。
今年末を予定しているAECの発足を受け、日系を含めた企業はシンガポールをアジア地域HQとして、ここからASEAN各国の市場に入るという動きを加速しているところだ。そのため、基盤を柔軟に拡張できるクラウドの需要が高まっている。
──IIJグループのビジネス状況は。
大野 現在、営業やサポートなど、19人のスタッフを抱え、そのうち、現地採用は私を入れて17人。もちろん、ビジネス領域はシンガポールに限らず、マレーシアやインドネシアなどASEAN全体だ。ASEANでは、NTTコミュニケーションズなどの通信キャリア系や富士通といったメーカーが事業を展開しているが、当社はクラウドやネットワーク構築などの広いポートフォリオをもち、商材に関しては競合に負けないと自負している。
当社の弱点は、拠点が少ないこと。私が決めることではないが、今後は拠点づくりも欠かせないと捉えている。現在は、アジアのHQ機能をシンガポールに集約して、そのためにクラウド基盤を採用するというニーズが高いので、当面は「シンガポール集約型」の案件でビジネスを伸ばしたいと考えている。今年の目標は、データセンター(DC)のラックスペースをとにかく売り切ることだ。
──ASEANで事業を展開する際の落とし穴は何か。ASEANビジネスの“大先輩”として聞かせていただきたい。
大野 価格とスピードが命。「明日からシステムを使いたい」と言われることさえある。一方、「品質」に関しては、目に見えるものではないので、訴えてもなかなか通じない。ASEANでカギを握るのは、人間関係。直接、ビジネスの話に入って商談を進めるというよりも、まずは一緒に食事に行って、食べたり飲んだりしたほうが、信頼関係をつくりやすい。私の経験値です(笑)。(ゼンフ ミシャ)
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