三井情報(齋藤正記社長)は、地場のコングロマリット(複合企業)と協業することによって、ASEANでの事業拡大に取り組む。この9月、モバイル通信や不動産開発など、幅広い領域でビジネスを展開するインドネシアのリッポーグループと手を組んで、同グループでデータセンター(DC)事業を手がけるGraha Teknologi Nusantara(GTN)に出資した。三井情報は今後、こうした「財閥」との協業の横展開に動き、ASEAN各国で基盤構築やDC運用など、ICT(情報通信技術)サービスの提供を目指す。(ゼンフ ミシャ)
齋藤正記
社長 三井情報は、シンガポールやロンドンに拠点を構えて、従来は、親会社である三井物産向けのICTインフラの提供を海外事業の主な内容としてきた。今後は、経済成長とともにクラウド市場が立ち上がりつつあるASEANに重点を置き、三井物産以外の企業をターゲットに、クラウド基盤の構築やDC運用といったサービスを現地で売り込む。そのために乗り出したのは、幅広い事業領域で地場市場に根づき、政界にパイプをもつコングロマリットとの協業だ。
第一弾として、この9月、三井物産と共同で、インドネシアのリッポーグループに属するGTNに10億円を出資した。GTNは、DC事業を手がける部隊としてリッポーグループが立ち上げた企業で、出資率はリッポーグループが65%、三井情報が25%、三井物産が10%。現在、本格的なサービス展開に向け、DC設備の増床を進めており、規模に関してアジア最大級のセンターを目指すという。三井情報の齋藤社長は、「3~4年後をめどに投資の回収を目指し、利益の創出につなげたい」としている。
齋藤社長は、「地場の財閥はものすごく大きなパワーをもっている」と捉えて、今後、タイやマレーシアをはじめ、「ASEANの5か国ほどで、財閥系企業とのパートナーシップを築きたい」という計画を打ち出している。三井情報として現地法人をつくらず、投資リスクを抑え、コングロマリットの人脈や営業リソースを活用することによって、案件を獲得するという構想だ。2014年に完全子会社化を発表し、関係を密にした三井物産を通じて、各国のコングロマリットに接近し、協業に向けた商談を進めていく。
インドネシアは、クラウド市場が立ち上がりつつあるなかにあって、「DCの絶対数が足りない」(齋藤社長)。そんな環境下、三井情報はいち早く日本で培ったDC事業のノウハウを投入し、リッポーグループと手を組んで市場開拓を狙う。