インフラ構築に強い商社系システムインテグレータ(SIer)は、ASEANを重点的な地域として、海外事業の拡大に取り組む。日商エレクトロニクス(日商エレ、河村八弘社長)は、親会社の双日と連携し、インドネシアやベトナムで案件の獲得に力を注ぐ。兼松エレクトロニクス(KEL、菊川泰宏社長)は、2015年、日本国内で獲得した案件について現地でシームレスに対応するための「ブリッジ営業」を強化する。両社は、ASEANへの投資を継続し、強固な事業体制を築くことによって、ASEANの市場を将来のビジネスの柱に育てる。(ゼンフ ミシャ)
日商エレ
河村八弘社長 日商エレの河村八弘社長は、「引き続き、投資を行っていく」として、ASEAN事業に力を入れていく方針を明らかにした。同社は、ベトナムとインドネシアに現地法人を置き、地場の通信事業会社などに対して「スイッチやルータの構築を中心とする案件を着実に獲得している」(河村社長)という。今後、親会社である双日が現地で築いている販売網や営業リソースを活用しながら、提案活動を加速して、2017年度(18年3月期)末までに、ASEAN事業で利益を創出することを目指す。
売り上げや利益に大きく貢献していくとみられる有望市場のASEANだが、課題も少なくない。現地での事業展開は、大規模の先行投資が必要になるだけでなく、地場企業をビジネスの相手にする場合は、与信リスクが生じて不採算案件になりかねないなど、懸念材料が多い。したがって、SIerにとっては、投資余力が問われる“体力勝負”になる。つまり、SIerの経営トップがいかに腰を据えて、揺るがぬ決意で継続的に投資を行っていくかが問われることになる。そのことが、中長期的にみると、ASEAN事業の成否を決めるといえそうだ。
KEL
菊川泰宏社長 タイで日系企業に対してのITサポートを手がけるKELの菊川泰宏社長は、2015年、「ブリッジ営業を強化する」ことに取り組む。同社は、タイで実装する案件を日本国内で獲得することが多く、日本を現地につなぐブリッジ営業によって、シームレスな対応を図ることを構想している。海外案件は、大手企業相手でも売上規模が比較的小さいので、国境を越えた営業対応の効率をいかに向上させるかが、利益を高めるうえでのポイントになる。
親会社が大手商社で、“息が切れない”ASEANでの事業展開に優位性を発揮する日商エレやKEL。2015年は、投資の回収に向けて、重要な年になりそうだ。(つづく)