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NEC(中国)、日下総裁は中国ローカル企業との協業姿勢を鮮明に、スマートシティ分野で新商材を投入
2014/06/23 19:15
NEC(中国)は、対日オフショア開発のほか、中国の政府や企業向けに現地ビジネスを手がける。売上高に占める日系企業の割合は約60%で、中国の政府・ローカル企業はまだ約40%。日下総裁は「中国のIT市場のなかで、日系企業向けの市場規模はせいぜい3%程度しかない」とみて、スマートシティを中心とした中国政府・ローカル企業向けビジネスの拡大を急いでいる。
顔認証で地場カメラメーカーの弱みを補完
セキュリティでは、2013年秋に空港の税関やオフィスの入退室などで活用できる顔認証エンジン「NeoFace」を発売。ローカルのカメラメーカー数社と協業し、顔認証エンジンとカメラを組み合わせたソリューションとして提供している。中国のカメラメーカーは、安価なモデルを提供している企業が多く、価格だけの競争に陥りがちだ。そのなかで優位性を発揮するために、「NeoFace」を付加価値にして、商品の差異化を狙う。
日下総裁は、「販売を開始してから半年ほどだが、立ち上がりは順調で、販売数は着実に伸びている」とアピールする。さらに今年7月には、顔認証エンジンにアプリケーションを盛り込んだ「Captran」を発売する予定で、「これによって、顔認証と同時に、対象者のモバイル端末に対してメールを配信することができるようになる」(日下総裁)という。
高齢者サービス市場に本格参入
一方、ヘルスケアでは、今年7月に「NEC スマート養老情報化管理プラットフォーム(NEC i-Care)」の本格的な販売に着手する。裕福な高齢者向けの長期療養型施設をターゲットに、高齢者がタブレット端末を通じて料理を注文するシステムや、スタッフが高齢者の健康状態を管理するシステム、超音波センサを活用して個室内の入居者に異常がないか動体監視する見守り型システムなどを提供する。すでに、深センのデベロッパー、海親頤現代養老サービスと協業契約を結んだ。海親頤現代養老サービスは、今後1000床規模の高齢者ケア施設を十数棟建設する予定で、そのすべてにNEC(中国)のシステムを採用することを決めている。
中国の高齢者サービス市場は、2020年に5000億元規模まで拡大するとみられている。日下総裁は、「とくに裕福な高齢者向けの養老施設は、健康を維持する環境への投資意欲が高く、IT需要が期待できる。この分野で、シェア10%は獲得したい」と語る。将来は、NEC(中国)の顔認証やBEMS(ビルディング・エネルギー・マネジメント・システム)も施設に導入していくという。
重慶市でエネルギー制御にまで踏み込んだBEMSを稼働
エネルギーでは、昨年4月にスマートシティ・クラウド分野で戦略的提携を結んだ重慶市と、近日中に市内の工場でBEMSの実証実験を開始する。重慶市が工場などのエネルギー利用を制御する集中管理施設を建設し、NECのシステムを導入する。日下総裁は、「一般的なスマートシティプロジェクトのBEMSは、エネルギー利用の“見える化”を目的としたものが多いが、今回のプロジェクトではさらに一歩踏み込んで、エネルギーの制御までを対象にしている」と説明する。NEC(中国)は、将来、重慶市が誘致する工場すべてにBEMSを導入していく構想を打ち立てている。
さらに蓄電の分野では、半年後をめどに、中国の大手自動車部品メーカー、万向集団と蓄電システム事業の合弁会社を設立する予定だ。
ローカル企業との協業をNEC(中国)が推し進める背景には、「案件を獲得するためには、日系企業を前面に押し出すことは得策ではない」(日下総裁)という考えがある。スマートシティなどの政府関連案件の入札では中国系企業が優先される傾向にあり、「外資系企業というだけで、入札の対象外となることもざらにある」(日系IT企業の総経理)。だからこそ、日下総裁は「中国マーケットに精通していて、キーになる顧客層にリーチできるコネクションをもっているようなパートナーを、それぞれの領域でリクルートしている」と、ローカル企業との協業重視の姿勢を鮮明に打ち出しているのだ。NEC(中国)は、15年度の売上高1000億円を目標に掲げているが、このときには現地ビジネスの売上高に占めるローカル政府・企業の比率を70%までに高める考えだ。(上海支局 真鍋武)
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