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米ネットスイート「SuiteWorld 2014」、キーワードはオムニチャネル、ネルソンCEO「広義のCRMが必要」

2014/05/14 18:45

【米国・サンノゼ発】米ネットスイート(ザック・ネルソンCEO)の年次カンファレンス「SuiteWorld 2014」が、現地時間の5月13日、米国カリフォルニア州のサンノゼで開幕した。例年同様、イベントのオープニングを飾ったのは、ネルソンCEOの基調講演。ネットスイートの継続的な成長をアピールするとともに、最新の事業戦略や製品情報を発信した。15日までの3日間の開催で、昨年の5000人を大きく上回る6500人のユーザー、パートナーらが参加する。

 ネルソンCEOが強調したキーワードは、「オムニチャネル」だ。ネットスイートは、ERP、CRM、Eコマースのビジネスアプリケーションスイート「NetSuite」を単一のデータベースやバックエンドシステムをベースに提供しているが、ユーザー企業のビジネスがオムニチャネル化していることで、これらの製品の強みが従来以上に発揮できる環境になっていることを強調。「B2C、B2B、B2B2Cといったビジネスモデルを並行して進めるケースも増えているし、純粋なプロダクトカンパニーや純粋なサービスカンパニーというのもなくなってきていて、お互いがお互いのビジネス領域に浸食している。ビジネスモデルの変化とは、すなわちITシステムの変化であり、商機を逃さずに将来の成功を手にするためには、システム開発もインプリメンテーションも迅速にする必要がある。その点で、ネットスイートはユーザーの将来を保証する」と、参加者にメッセージを投げかけた。 

ザック・ネルソンCEO

 さらにネルソンCEOは、オムニチャネル対応に関連して、CRM(Customer Relationship Management)の定義に言及。市場をリードするsalesforce.comのCRMなどを念頭に、「旧来のCRMは、見込み客を探すためだけのものになってしまっている」と指摘。そのうえで、「CRMは本来、文字通り顧客中心主義で顧客関係を管理していくもの。これは非常にハードルが高い業務で、実現するには、ERPやEコマースとバックエンドを共有したソリューションが必要だ。オムニチャネル化が進むほど、その考え方は重要になる。ネットスイートは、カスタマー中心の顧客関係管理の思想をベースに、CRMはもちろん、ERP、Eコマースを提供している」と強調した。

 オムニチャネル対応を強化する製品アップデートとして、2012年に発表したEコマースのクラウドサービス「NetSuite SuiteCommerce」に、新たに「B2B Customer Center」モジュールを追加することを明らかにした。B2Bビジネスをサポートする機能として、購買・調達サイトを立ち上げるときなどに適用できるという。「NetSuite SuiteCommerce」は、日本では今秋リリースする予定で、「B2B Customer Center」も利用できるようになる。

 その他の製品強化として、UI(ユーザーインターフェース)を刷新することも明らかにした。ネルソンCEOは、「フラットなデザインで、HTML5ベースのUIにする。ダッシュボードのアジリティも向上している。また、さまざまなタブレット端末に順次対応していく」と話した。今秋リリースの「NetSuite バージョン2014.2」で実装するが、旧UIからの段階的な移行にも対応する。

 ネルソンCEOは、「2014年はサービス業にフォーカスする」とも発言し、サービス業向けに、ERPのプロジェクト原価管理機能などを強化したことを明らかにした。これを「SRP(services resource planning)」として訴求していく方針だ。昨年の「SuiteWorld」では、「NetSuite」に製造業向けの標準的な生産管理システムの機能を網羅するモジュールを新たに追加したが、これとあわせて「プロダクトとサービスの原価管理を単一のシステムで賄うことができるようになった。企業のビジネスモデルの変化を強力にサポートできる」と、メリットを説明した。

 直近の業績については、顧客数が2万社に達し、2014年の売り上げは5億4400万ドルを見込んでいると説明。13年の売上高は4億1450万ドルで、ハイペースでの成長を維持するという。また、米国の調査会社、ガートナーの調査結果をもとに、クラウド、オンプレミスを問わず、財務会計ソフトの分野でNo.1の成長率を誇ることを訴求。マイクロソフト、Sage、SAPを引き合いに出し、ネットスイートの業績の伸びがライバルを圧倒していることを強調した。

 さらに、パートナービジネスの比率の高さをアピール。「ネットスイートのクラウドアプリケーション開発プラットフォーム『SuiteCloud』上のビジネスは、その70%をサードパーティアプリをつくるISVパートナーが占める。新規ビジネスも45%はパートナー経由」として、パートナーとの連携強化を軸に、今後も拡販する考えを示した。(本多和幸)
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