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従前のSIビジネスが崩壊する理由――未来戦略講座『22世紀アカデミー』の“SIビジネスNew学式”で議論白熱
2014/04/28 18:45
SIビジネスNew学式は、22世紀アカデミーの谷畑良胤校長による入学式をイメージした開講宣言によって始まった。谷畑校長はSIerの現状について「売り上げは好調だが、環境の変化に今後どう対応すべきかが見えていない」と指摘し、「講座では。新しいSIビジネスのあり方を紹介していく」と約束した。
続くパネルディスカッションでは、22世紀アカデミーの講師を務めるネットコマースの斎藤昌義代表取締役、船井総合研究所の斉藤芳宜チーフ経営コンサルタント、オレンジコミュニケーション・サポートの永井一美代表が登場。自己紹介を兼ねて、SIビジネスの課題などを語った。
斎藤昌義代表取締役は、SIビジネスが崩壊する最大の理由として、相互不信とゴールの不一致という「構造的不幸」があることを挙げた。ユーザー企業が求めるゴールに対して、決められた予算で利益を確保したいSIerとでは、どうしても意識のずれが発生してしまう。さらにクラウドの普及によって、SIerは従来型のSIビジネスの変革を余儀なくされていく。斎藤代表取締役は、「新しいビジネスモデルを確立しなければ、SIは崩壊していくだろう」と厳しい見方を示した。
斉藤芳宜チーフ経営コンサルタントは、「時代の変化とともにSIビジネスも変わっていくべき」と語り、変わらなければ「SIビジネスはいつかなくなる」と発言。変化を促す例としてクラウドを取り上げ、「例えば、従来のシステムは一度構築すると何年かは進化しない。しかし、クラウドは進化のスピードが速く、常に最新のすぐれたシステムを使いたいというユーザーニーズに応えている。SIerも、そのスピードに対応したビジネスモデルを確立すべき」とした。また、大都市圏のSIerは、システム開発案件が多いこともあって、危機意識が欠落しがちだという。一方、地方のSIerの危機意識は高く、クラウド対応も進んでいる。そのうえで、「2020年頃には、地方のSIerの方が最先端のビジネスを展開するようになるのでは」と予測した。
永井代表は、プログラマーからSIerの経営者までを経験した自身の経歴から、SIビジネスの“崩壊”を語るのではなく、一考察として持論を展開。SIビジネスの問題点を「“見えない財”を扱っているところにある」とした。一般的な商品の価格は、それ自体の価値と相場で決まる。しかしSIビジネスでは、システムの価格が人月で決まる。そこが見えにくいという。また、エンジニアやプロジェクトマネージャーなどのスキルも見えにくい。さらに、一般的には産業としての取り組みも見えにくい。ITは企業や社会に不可欠な基盤になったが、仕事の内容が見えにくいために、若者には不人気な業界になっている。「だからSIは厳しい」。
この後、三氏は谷畑校長をモデレータに「従前のSIビジネスが崩壊する理由」をテーマに熱く議論。新しい価値をどのように生み出していくのか、将来に向けてどのように意識を改革していくのかなど、パネリストの知見の応酬に参加者は熱心に聞き入っていた。熱い議論を締めたのは、永井代表。「ゲームなどを扱う企業も同じIT業界に括られるが、例えばCTCよりも株式の時価総額が高かったりする。その理由は、ITを使う側とつくる側の違いにある。ITは道具にすぎない。今後、SIerもITを使う側に舵を切らないとうまくいかない」。ほかのパネリストも深くうなずいた。
22世紀アカデミーは、SIビジネス向け講座の「for SI Business」を6月に開講する。近日開講の講座では、パネルディスカッションに参加した三氏のほか、営業創造の古杉和美経営戦略支援事業責任者、ニスコムの柴田直樹主席クラウドエバンジェリスト、スパイダーイニシアティブの森辺一樹代表取締役社長が講師を務める。また、年内には、デジタル家電ビジネス向けの「for Consumer Electronics Business」、海外ビジネス向けの「for Overseas Business」の開講も予定している。
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