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ウェアラブルの時代はもう目の前に来ている
2014/04/07 18:45
健康管理に特化したUP
活動量計の老舗といえば、ジョウボーンの「UP」。シリコン製の柔らかい素材でできたリストバンド型のウェアラブルデバイスだ。およそ2年半前に最初の製品をリリースし、この3月に後継モデル「UP24」を発売した。コンセプトは、健康管理に絞り込んでいる。睡眠・運動・食事のパターンを収集し、生活改善に役立てる。新製品では、Bluetoothでリアルタイムにスマートフォンと連携することができるようになった。ジョウボーンの国際パートナー・製品開発部門で責任者を務めるヨーゲン・ノルディン氏は、シリーズを「ユーザー自らが目標を立て、その目標を達成する手助けをするデバイス」と位置づける。「どうすればユーザーが目標を達成できるかを、データ解析の結果をもとに行動の変革を促すデータとして提供する」。ジョウボーンでは6名のデータサイエンティストがユーザーのデータを解析している。「解析にもとづいて、行動に直結するアドバイスをユーザーに提供できる唯一の企業」とノルディン氏は語る。それが、他社製品との差異になっている。
リストバンド型を採用しているのは、「人の状態を取得するデバイスとしては、手首につけるのが最適だと判断した」からだという。しかし、ディスプレイのような表示関連はすべてスマートフォンに任せ、「UP」はほぼ情報収集に特化したデバイスにした。大きさの問題、バッテリ寿命の問題、仮にディスプレイをつけたとしても、十分な大きさにはできないなどの問題点があり、現在のかたちに落ち着いた。しかしノルディン氏は、「まだまだ最初の段階。ネックレス型やイヤリング型、服自体に組み込まれるものなど、将来はさまざまなバリエーションのデバイスが登場するだろう」と語る。
活動量計型のウェアラブルデバイスに共通しているのは、どれも自分のさまざまな活動を「見えるようにする」ということだ。例えば体重の管理なら、特別のツールがなくても体重を「見る」ことは比較的簡単だが、睡眠時間や睡眠の深さはみえにくく、管理は難しい。歩いた距離や歩数なども、毎日の記録はなかなかできるものではない。記録を通じて自分を知り、そこから健康や話題づくりなどの目標に導くのが、活動量計型のデバイスの特徴だ。
もう感覚に頼らなくていい、スポーツを変えるデバイス
ウェアラブルデバイスを「身につけるもの」と考えれば、やや異なる製品だが、人間の活動を記録するという点でウェアラブルの分野に含めて考えられているのが、スポーツ系の記録デバイスだ。この4月にエプソンが発売するゴルフスイング解析システム「M-Tracer For Golf」は、その代表だ。ゴルフのスイングの軌跡や、グリップやヘッドのスピード、スイング中のシャフトの回転までを克明に記録する。エプソン販売の取締役、中野修義販売推進本部長は、「今まで感覚でしか教えられなかったようなことを、数値で示すことができるようになる」と話す。製品発表会でゲストとして登場したゴルフティーチングプロの堀尾研仁氏に、「これでぼくらの仕事はなくなるかもしれない」と言わしめたほど、インパクトがある製品だ。
プリンタやプロジェクターのイメージが強いエプソンだが、一方でさまざまなセンサを開発・製造しており、それらは同社の屋台骨を支える基本的な技術になっている。その高精度センサを製品に落とし込んだのが、「M-Tracer」だ。高速のゴルフスイングを高精度で記録できるよう、1秒間に8回転させても追随できる精度の高いセンサを採用し、これまでわからなかったスイングの中身を「数値で見える」ようにした。
例えば、ゴルフのスイングで一般のプレーヤーが陥りやすいい「手打ち」についても、数値でその実体がわかるようになる。スイングの途中でグリップスピードを落とすことで、ヘッドスピードが上がるということが、研究の結果わかっている。しかし、これまでは「力を抜いて振る」というあいまいな表現でしか伝えられなかった。その状態が、数値で確認できるようになるわけだ。
製品名に「For Golf」とあるように、こうしたセンシングデバイスは、他の競技にも十分応用できる。中野本部長は「次の競技向けの製品も試作に入った段階。来年には発表できるのでは」という。テニスでも野球でも水泳でもランニングでも、あらゆるスポーツに応用できそうだ。感覚的な言葉でしか伝えられなかったことを数値で表すことで、上達のスピードが格段に上がることも期待できる。