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MIJS、土佐でワークショップを開催、真の「地方力」を徹底議論

2012/10/11 20:11

 国産ソフトウェアベンダーで組織するメイドイン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS、美濃和男理事長=エイジア社長)は、10月11日、高知市の高知新阪急ホテルで、「2012年度 MIJS土佐ワークショップ」を開催した。MIJSが年一回、地方で開催する年次イベントで、今回はこれまでのワークショップで最大のものとなった。テーマは、「日本を支える真の地方とは――ソフトウェア産業の発展が地方を元気にする」。特別ゲストとして、高知県の尾﨑正直知事が講演したほか、MIJS会員企業による講演やパネルディスカッションが催され、MIJS会員や地元のITベンダー・学生など、約300人が参加した。

タイムコンシェルの福島元幸社長

 第一部のワークショップの冒頭、地元ITベンダーを代表して挨拶に立ったのは、今回事務局担当であるタイムコンシェルの福島元幸社長。「ワークショップは、MIJSの理念をヒト対ヒトで、地方に向けて伝えるために開催している。地域の活性化と同時に、日本を元気にすることも目的だ。今日は、ソフト業界にとどまらず、異業種にも伝えるきっかけになる日だ」と、歓迎の意を述べた。

大阪の事務所からビデオ会議で挨拶したサイボウズの青野慶久社長

 続いて、四国で創業したサイボウズの青野慶久社長が生中継でビデオ出演し、「サイボウズは愛媛県松山市で15年前にスタートした。これからは地方の時代だと創業したが、人の採用に苦労し、結果的に東京に移転した。ただ、いまは東京から大阪、四国に人材が逆流している。当社は、4年ほど前に拠点を構えたが、現在60人ほどの規模に拡大している。時間と場所にとらわれずに事業をできる時代で、地方でやる気のある企業に登場し、新しい産業を興してほしい」とエールを送った。

MIJSの設立当時の思いを語ったMIJS前理事長で1stホールディングスの内野弘幸社長

 さらに、MIJSの前理事長で1stホールディングスの内野弘幸社長は、「MIJSは2008年6月に、危機感と使命感からつくった。一つ目の危機感は、日本のソフト産業だ。日本から海外への輸出がほとんどない。日本のシステム構築は、パッケージシステムが17%。米国は逆で、65%がパッケージでシステムがつくられている。日本の企業は、受託ソフト開発(手組み開発)が多く、優秀なエンジニアが一極集中してしまう。二つ目の使命感だが、MIJS会員のクオリティというベンダーは、和歌山で事業を興し、地域貢献した。そんなかたちで、先端技術を採り入れて地方に広めたいという使命感があった。日本のソフトビジネスが、世界を引っ張ることができるか。日本人は五感の鋭さがある。その繊細な感覚でソフトをつくれば、心地よいシステムができる。また、忍耐強く品質の高い製品をつくることができる。これは世界での優位性だ。最後にサービス精神が旺盛で、ホスピタリティがある」と、力強く語った。

尾崎正直・高知県知事

 尾崎知事は、「日本を支える真の地方力とは」と題し、地方の課題とITに期待することについて講演した。「地方、とくに高知県の場合は、構造的な経済の縮みが起きていることが問題だ。例えば、就農人口が1年で1000人減っている。平成9年には、モノが2兆円売れていた。だが、平成19年は1兆6000億円まで縮小した」と、地方が置かれた厳しい状況を語った。そのうえで、「全国の景気がよくなっても、高知県の経済は低迷したままだ。高知県特有かもしれないが、これから他県でもそうなる。解決策は『地産外商』。県外に市場を求めるしかない。そのためには、首都圏などの都会に通用する生産・流通・販売に関する付加価値が必要だ」と、警鐘を鳴らした。

 続けて尾崎知事は「地産外商公社を設立し、官民共同で地域の資源を生かしたブレンドを外に販売する活動を積極化している。すべて数値目標を設けて実施している」と述べ、ITへの期待を次のように語った。「ITを活用したものづくりで、一次産業の付加価値向上を目指している。例えば、エメラルドメロンの日射比例かん水制御システムの導入で、高級メロンをつくることができるようにした。人手が減っているなかで、どう生産量を上げ、付加価値を高めるのか。高度な技術が求められている。オランダはITを使って新しい園芸システムで成功した。高知県もオランダを目指す。また、津波に備える水門の自動化システムや、スマートフォンから遠隔操作できる小型施設調査ロボットなどを生みだし、全国に売り出していきたい」と、近未来を語った。

パネルディスカッションでは、尾崎知事を含め、MIJS会員と高知県のITベンダー代表が討論。写真左から尾崎知事、システムインテグレータの梅田社長、インフォテリアの平野社長、ネオレックスの駒井社長、ソフテックの加藤社長、シティネットの渡邊社長

 このほか尾崎知事は、これまでマンガ王国として売り出してきた高知県が、そのコンテンツビジネスのなかでソーシャルゲームに関連する産業創出を目指していることなどを紹介し、「ITを活用した地域の活性化と産業振興のために、IT業界に高知県へ来てほしい」と、MIJS会員への期待を表明した。

 第一部前半の締めは、地域力を高め、「自立」する方法などについて討論するパネルディスカッション。パネラーは、尾崎知事、インフォテリアの平野洋一郎社長、システムインテグレータの梅田弘之社長、ネオレックスの駒井拓央社長、ソフテックの加藤稔社長、シティネットの渡邊基文社長の6人で、司会進行は、IT Leadersの田口潤編集長が務めた。

MIJS各社のソリューションを紹介したコクヨS&Tの山崎部長

最後の挨拶をするMIJSの美濃理事長

 尾崎知事は、地域力を高めるために、どう「自立」するかについて、「地場で地産した産業を外にもって行って、売れるまでに仕上げることが自立だと思う」と持論を述べた。続けて、ネオレックスの駒井社長は「顧客が喜び、得たモノに依存していないといけない。『本質』に忠実であるべきだ」と語った。システムインテグレータの梅田社長は「みんなに『存在』を知られることが重要で、よそを真似ることでは成り立たない」と話した。ソフテックの加藤社長は「他社の追随を許さない商品サービスづくり」と、他社と異なる部分へのこだわりが必要だと述べた。シティネットの渡邊社長は「自由意志、自己責任、顧客創造が重要で、そのうえで自社のプラットフォームを確立する必要がある」と話した。インフォテリアの平野社長は「自分たちでルールを決め自分たちで判断するのが『自立・自律』であって、頭数を増やすだけの雇用でなく、一人ひとり、必要とされる人を採用すること」と述べた。

 後半は、コクヨS&Tの山崎篤Tovas事業開発部長が、MIJS・26社のソリューションを紹介。最後に、MIJSの美濃理事長が「MIJSの理事長に就任した理由は、ソフトプロダクト産業で元気な社会を取り戻したいからだ。われわれが牽引し、世界のリーダーになり、子どもたちに引き継ぎたいという思いがある。世界で成功したソフトベンダーをMIJSから輩出し、GDP(国内総生産)を底上げしたい」と語り、第一部を終了した。(谷畑良胤)
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外部リンク

MIJSコンソーシアム=http://www.mijs.jp/