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「打倒! セールスフォース」でタッグ、ブランドダイアログとエイジアの提携の裏側にあるもの
2012/03/14 20:07
SFA/CRM開発を断念、ブランドダイアログに接近
SaaS型営業支援(SFA)/顧客管理(CRM)のアプリケーション「KKS」は、ブランドダイアログとKDDIが協業し、2011年8月に販売を開始。発表時、すでにエイジアの「WEB CAS」を搭載した新エンジンをリリースする計画を明らかにしていた。この新エンジン「GRIDYメールビーコン」は、リードナーチャリング(見込み顧客育成)を推進する営業支援メールマーケティング・サービスだ。「KKS」の顧客データベースに蓄積したデータから任意の条件(複数条件の組み合わせも可)で顧客を抽出し、個別の宛名を付して営業担当者名で一斉にメールを配信する仕組みだ。ブランドダイアログの稲葉社長は、両製品の連携で「営業担当者の負担を大幅に軽減して、メールによる効率のいい営業活動で商機を創出する最強のツールになった」と言ってはばからない。エイジアは、経営戦略として「IMS(Internet Marketing Solution)」を掲げ、インターネットビジネスの戦略からウェブサイトの構築・運営・販売促進までをワンストップで提供するソフトウェアベンダーだ。これを実現するコアな製品が、自社開発の統合CRM(顧客情報管理)アプリケーション「WEB CAS」シリーズ。このなかには、携帯電話やパソコンに毎時300万通の大量高速配信ができるOne to Oneのメール配信システムなどをラインアップしている。この領域では国内トップのシェアを誇り、東アジアなどでの海外展開にも積極的だ。
だが「WEB CAS」は、電子商取引(EC)サイトなど、BtoC向けでの利用が大半だ。そこで同社は、一般企業向けに市場を拡大することなどを含め、数年前から自社で本格的なSFA/CRMの開発を模索してきた。中西専務は「『WEB CAS』には、データベースやOSに依存せずに使うことができるという利点がある。当社でSFA/CRMの自社開発を模索した際にも、データベースをカスタマイズせずに使える製品にする考えだった」と話す。データベースやOSに依存せず、ノンカスタマイズで使える「WEB CAS」は、ECサイトをはじめ多くの顧客に受け入れられたことから、このアーキテクチャをベースに自社開発のSFA/CRM製品を出せば、一般企業にも売れると考えたのだ。
ところが、市場をリサーチするなかで「SFA/CRM市場にはあまたの競合がいる。いまさら勝てる領域ではない」(中西専務)という現実がみえてきた。そんなとき、「巨大組織に殴り込みをかけるベンチャー企業の存在を知った」(中西専務)という。意気込みに共感したエイジアの美濃社長は、さっそくそのベンチャー企業、ブランドダイアログの門を叩いた。
実のところエイジアは、ブランドダイアログと協業を進める前、SFA/CRM市場で活躍する外資系大手や国産大手ベンダーとの連携を模索していた。だが、「当社の開発理念と合わない」(中西専務)と、協業を断念している。この時点で「夢破れた」と諦めかけていたところで、ブランドダイアログと出会うことができたわけだ。
「思い」の語らいからスタート
エイジアのラブコールを受け、ブランドダイアログは協業に関する話し合いを行った。ブランドダイアログの稲葉社長は「最初は“思い”を語り合うことに終始した」と振り返る。そしてこのときエイジアは、「稲葉さんと考え方が一致した」(中西専務)と感じたという。これを機に、製品連携から資本連携へと、話はとんとん拍子に進んだ。欧米製品に比べ遅れている国内リードナーチャリングの普及で両社の考えが一致し、ブランドダイアログの「Knowledge Suite」にエイジアの「WEB CAS」を埋め込むことで、国産クラウドが巻き返しを図ることができると判断したのだ。ちょうどブランドダイアログとKDDIの提携交渉が佳境に入った時期で、これと並行してエイジアとの製品連携が具体化していく。エイジアとの連携製品の開発は、11年3月から始まった。ブランドダイアログ側の開発責任者、森谷取締役CTOは、エイジアとの連携前の状況を「当社にはSFA関連製品として『名刺CRM』がある。ただ、これは顧客情報を入れる箱、データをインプットするシステムにすぎない。インプットに注力しすぎて、アウトプットの機能拡張に関する開発が欠落していた。そこでウイングアークテクノロジーズと提携し、同社のBI(ビジネス・インテリジェンス)『Dr.Sum EA』とも連携していた」と語る。
しかし、「BIは顧客情報やSFAの状況把握をするビューアーで、営業活動のPDCAを回すにはアウトプット部分にまだ不足があった」と森谷取締役CTO。そんなときにエイジア側からの働きかけがあって、ブランドダイアログは二つ返事で協業を了承した。
両社がこだわったのは、ユーザーインターフェース(UI)を含めた使い勝手だ。そこで「GRIDYメールビーコン」には、「KKS」のUIを完全に埋め込んだ。タブが機能化され、そこをクリックすればメール配信機能を使うことができる。言い換えれば、「WEB CAS」が完全に「Knowledge Suite」と一体化したイメージだ。森谷取締役CTOは「最初は当社製品のAPIを使って連携する計画だった。しかし、『WEB CAS』はBtoC向けにつくられていたので、企業で使う際に必要な機能を盛り込む必要があった」と話す。
UIと機能を一から開発
企業で大量のメールを一斉配信するときには、配信先のリストを抽出し、配信許可を上司に承認してもらうなどのステップが必要だ。こうした企業で使うときに必要な機能を「Knowledge Suite」に埋め込むかたちで、「WEB CAS」を連携させた。森谷取締役CTOは、「“思い”を実現するために妥協は許されないと感じていたので、UIとバックヤードの機能を一から見直した」と語る。両社製品の魅力を最大限に引き出した結果、それ以上の連携製品が完成したのだ。エイジアの中西専務は「スピード感のある開発だった」と振り返る。KDDIが提供する「KKS」の導入数は明らかになっていないが、ブランドダイアログの有料版である「Knowledge Suite」は、累計で約1200社が導入している。一方、エイジアの「WEB CAS」は約800社。この国産両社がタッグを組んだことで、SFDCの牙城をどこまで崩すことができるのか、今後の販売動向が注目されるところだ。(谷畑良胤)
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