ニュース
米IBM、業界初の新製品と新報償金制度を同時に公表、米ニューオーリンズで開催の年次イベントで
2012/03/01 20:07
2005年8月の巨大台風「カトリーナ」の傷跡が依然として残るニューオーリンズ。PWLC 2012の初日は、歴史ある観光地の趣を一望できないほど深い濃霧に覆われたなかでスタート。二日目は一転して日本の初夏を思わせる好天に恵まれるなど、気象の変化は激しい。
開幕にあたって、PWLC 2012の進行役でパートナー事業を統括するグローバル・ビジネス担当のマーク・ヘネシーGMが、「IBMの成功にBPは必要不可欠だ」と参加者に労いの言葉を贈った。ヘネシーGMは、「2011年度(11年12月期)のパートナー関連の業績は、ビジネスアナリティクスとクラウドが牽引して、世界で16%成長した。ビジネスアナリティクス関連製品・サービスの認定パートナーは2万7000社に上り、BPのうち80%がクラウド関連のスペシャリティの認定者を有するまでになった」と説明。このうち、クラウド関連事業に関しては、前年度から世界で300%の伸びを示したという。
ヘネシーGMは、続けて「(サミュエル・パルミサーノ前会長が敷いた)2015年度までのロードマップは、BPの成功なくして成し得ない。競合他社の追随を許さない当社の製品・サービスを用いて、産業ベースのソリューションとしてチャンスが膨らんでいるビジネスアナリティクスなどのビジネスを拡大してほしい」と語った。
続いて、マーケティング戦略の代表者であるジョン・イワタ上級副社長が登壇。08年秋に立ち上げたスマータープラネット構想によって、レノボに売却したパソコン部門の全盛期に比べてもIBMの認知度は高まり、「いまや『スマート』という言葉がさまざまなシーンで使われるなど、IBMはコカ・コーラに次ぐほどの認知度を得た」と、スマータープラネットの広がりを語った。イワタ副社長によれば、構想下で得たSI案件は新興国での進捗などが寄与して約6000件に達し、その約半数にBPが関与している。
イワタ副社長は、スマータープラネット案件の65%は企業のIT部門以外のチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)などによって推進され、「ITがバックオフィスからフロントオフィスに格上げされた」と、新たなITの潮流をつくることができているとした。サーバーやストレージなど、バックオフィスの基幹システムなどの効率化だけでなく、「ビジネスの第一線にITを適用することに成功した」と成功を誇示した。
イワタ副社長は、スマータープラネットの重要ファクターであるビジネスアナリティクスの事例として、テネシー州のメンフィス市警を取り上げた。IBMのアナリティクス関連製品で、犯罪頻度の高い場所や警察の巡回で得た犯罪危険地域などのデータを解析。警察官の勘に頼っていた犯罪対策にデータを加えることで、06年に比べ30%以上も犯罪を減らしたという。
またスマーターシティの例として、アイオワ州ダビューク市が取り組んだ省電力化を紹介。タビューク市は、クラウドを使ったスマートシティーの取り組みによって、導入前に比べて電力を11%削減したという。イワタ副社長は、「当社は、パソコンをやめ、ディスクをやめ、ソフトウェア中心の戦略にしたことで、大きな成功を得ることができた」と自信を示した。
次に、ビッグデータやアナリティクス関連を含めた技術責任者のジェフ・ジョナス チーフサイエンティストが、大量のパズルピースを家族で組んでいくことをたとえに、ビッグデータを解析する仕組みを説明した。ジョナス チーフサイエンティストは「彼(アップルのスティーブ・ジョブズを指していると思われる)の行動を分析すれば、夕方の5時35分にどこにいるかを87%の確率で予測できる」と笑いを誘った。そして、2010年9月に買収したデータウェアハウスの「Netezza」を紹介。低コストですぐれたパフォーマンスをもつ「Netezza」を使えば、「ビジネス情報から迅速に洞察を得ることができ、予測精度の高いアナリティクスが実現する」と述べた。
続いて、システム&テクノロジーグループのロッド・アトキンス上級副社長が、IBMの実績を説明した。2011年度は、ハードウェアが前年度比で6%、ソフトウェアが11%も伸張。アトキンス副社長は、「IDCの調査によれば、2012年の第一四半期(12年1~3月)にとてもエキサイティングなことが起き、世界市場でIBMサーバーがヒューレット・パッカード(HP)を抜いてNo.1になった」と、誇らしげに語った。メインフレームのリプレース市場などで、ワークロードに応じて適切なハードウェア資源を割り当てられる最新エンタープライズシステム「IBM zEnterprise」が好調だったことなどによって、IBMサーバーがトップに立ったという。
ただし、アトキンス副社長は、ハードはこの先、成長は横ばいで推移すると予測。「ハードを除外するわけではないが、『スマーター・コンピューティング』というさらにリッチなITを提供する統合的なポートフォリオをつくり、新しい機会を創出した」と語った。さらにそのポイントとして、(1)データのためのデザイン(2)クラウド管理(3)タスクのチューン――の三つを挙げ、追加のエンハンスを行っていくことを告げた。
そのうえで、「ハードとソフト、専門知識を統合し、一貫性のある業界初のファミリー製品『Expert』を、4月11日に世界同時に発表する」と、先端技術を簡素化して顧客に適用する仕組みを投入することを明らかにした。セッション後、日本のプレス向けインタビューに応じたアトキンス上級副社長は、BCN記者の「『Expert』はアプライアンス製品なのか」という質問に対して、「スマーター・コンピューティングとインテグレーテッドをキーワードに、すばやくシステムスタックを最適化する新しいカテゴリだ」と、直接的な表現は避けながら答えた。
この後、ソフトとシステムを統括するスティーブ・ミルズ上級副社長が、ソフトとハードを一緒にした業界ソリューションの販売を増やすことを目的に、BP向けの新インセンティブ(報償金)プログラム「IBM Solution Accelerator Incentive」を発表した。これは、ハードとソフトを融合して販売したBPに対して、IBMのハードに5%、ソフトに15%、ビッグデータ関連などでソーシャルを活用するソリューションを販売した場合に10%が、それぞれに報償金(キャッシュバック)を出すプログラム。
ミルズ上級副社長は「当社内では“Blue on Blue”(IBM製品の上にIBM製品を追加すること。IBMの企業カラーはブルー)というコード名で検討を進めていた制度で、業界に精通したBPがもつ知識を生かし、顧客価値を高めるためのシステムを提供してもらうのが目的だ」としている。ここには、ハードだけを販売するBPと、ソフトだけを提供するBPのマッチングを加速する狙いがありそうだ。(谷畑良胤)
- 1
関連記事
<特報>米IBM、中堅市場向けにDaaSとISVの新パートナー戦略を開始
米IBM、クラウドと情報分析市場向けの新パートナー制度を発表、情報分析では新ソフトも提供
米IBM、メインフレームで競合から約1200社を奪った、ロサミリア ゼネラルマネージャーが公表
日本IBM ISV向けの支援を強化 「Smarter Planet」を二人三脚で
<日本IBMの販売パートナー戦略>IBM製品・サービスの“伝道者”が説く「売るメリット」