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米アクセンチュア調査、財務・経理部門は成長機会よりもコスト管理を重視
2011/11/29 10:37
調査によれば、79%の財務責任者が自社の成長機会を見据えた財務機能の強化が「重要ないし非常に重要」と回答する一方で、実際に財務・経理部門が自社の成長機会を識別できていると回答した財務責任者は、わずか34%だった。
来年について、「市場拡大などの成長戦略に焦点を当てるべき」と考えている経営幹部は46%、財務責任者は38%。「コスト管理と成長戦略とを同様に重要視すべきである」と考えている経営幹部は41%、財務責任者は36%だった。それ以外の経営幹部と財務責任者回答者は、コスト管理に重点を置くとしている。
同社の財務・経営管理グループのマネージング・ディレクターであるポール・ボーレンジャー氏は、「財務・経理部門は、2008年以降に企業が直面した市場の変動と経営課題の渦中に置かれ、守りの戦略を採ってきた。しかし今後は、将来に備えて特定の市場や地域の成長の波を捉えることに焦点を当てるべきだ。これからの財務・経理部門は、企業の将来の業績向上に最大限貢献できるよう、これまで成果を上げてきたコスト管理を継続する一方で、自社の成長戦略に則した実現能力と柔軟性を兼ね備えた組織になるべきだ」と指摘する。
大半の財務責任者は、自社の財務・経理部門が自社に高付加価値をもたらす先進的な業務は行っていないと考えている。例えば、「自社の最高財務責任者が積極的に財務戦略の指揮を執っている」と答えた財務責任者は46%で、「財務・経理部門が他部署と連携して業務を行っている」と回答した財務責任者は45%にとどまった。こうした弱さを認識し、54%が「改善に向けた取り組みを進めている」と回答した。
財務管理者が直面する最も大きな課題の一つは、「財務機能を高度化するための十分な財源が確保できないことにある」と、財務・経理部門以外の経営幹部の32%が回答した。
財務責任者の78%が法規制への対応が「重要または非常に重要」と考えているにもかかわらず、その対応を「積極的に行っている」と回答した財務責任者は48%にとどまっており、財務機能に対する財源不足の表れであると同社はみる。
ただ、財務責任者は法規制の改正と市場の変動に積極的に対応しようとしており、またこれらは喫緊の課題であると捉えている。財務責任者のうち、65%が「現行と将来の法規制に対する自社のコンプライアンスを査定している」と回答し、58%が積極的なコンプライアンス・プログラムを開始している、55%が「経営資源をITや能力開発に振り向けている」と回答した。
市場の変動に対応するため、財務責任者の67%がコスト管理、66%がリスク管理、55%が予算管理・財務予測の高度化に取り組んでいる。ただし、「バランス・シートの最適化を実施している」という回答は40%で、「高度なモデル技法を活用している」のは30%、「市場の変動に対応するため財務・経理の組織編成・人材育成に注力している」のは37%にとどまった。
財務責任者は、増大するデータ量と人材不足への対応も大きな課題であると指摘しており、それが事業活動の支援を妨げている可能性があるという。財務責任者の40%が、「データ量の増大やデータ間の不整合、データ活用の複雑化が財務・経理部門にとって課題となっている」と回答した。このため、財務責任者の55%が「業績管理高度化のための予測精度向上」、49%が「より強いキャッシュ・フロー管理」、40%が「タイムリーな意思決定に役立つ指標や分析値を含む、最新の業績値のさらなる可視化が必要」と答えた。
人材不足については、36%が「自社の財務担当の能力開発と業績向上のために新たな社員プログラムを実施する計画がある」と回答した。最も多く挙げられた施策は、「他社と比較して競争力のある給与と福利厚生」(62%)、「個人の成果に紐づいた報酬体系」(60%)だった。最も少なかった回答は、「リアルタイムな目標管理制度の有効活用」(42%)、「知識を共有できる国際的・地域的コミュニティの構築」(44%)だった。
「人材不足とデータに関する課題こそが財務・経理部門の企業価値向上への取り組みを複雑にしており、このことを財務責任者は正しく認識している」とボーレンジャー氏は述べる。「財務責任者以外の経営幹部が、財務機能の足かせは財源不足によるものだと認識でき次第、最高財務責任者は事業活動を支援すべき。自社の成長戦略や法規制、市場の変動へより柔軟に対応できるよう、財務・経理部門の能力開発のための財源を確保すべきだ」という。
財務・経理部門が数々の課題に直面している一方で、回答したその他の経営幹部の66%は「財務・経理部門は他部門と十分な連携がなされている」と回答し、さらに69%が「自社の財務・経理部門の能力は業界トップないしは平均以上である」と回答した。また、75%は財務・経理部門が自社の全体的な事業戦略策定と実施に貢献していることに「満足」または「非常に満足」していると回答した。
調査は、売上10億USドル以上の世界各国14業種の企業を主な対象に、2011年1月~8月、3項目から構成する2度の調査をオンラインで実施した。一つの調査は財務部門の管理職を対象として実施し、530名を超える回答を得た。そのうち4分の1以上は最高財務責任者だった。もう一方の調査は、約300名の財務部門以外の経営層に対する調査で、回答者の80%以上が最高経営責任者、最高執行責任者、最高情報責任者だった。最高財務責任者や最高執行責任者へのインタビューを通じて得られた情報も盛り込まれている。(信澤健太)
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