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JAIPA、京都で「ISP&ホスティングの集い」を開催、震災後のDCでの対応などを発表
2011/07/20 10:33
震災関連では、このあとGoogleのテクノロジーを研鑽するコミュニティ「京都Google Technology User Group」の山下大介代表が「東日本大震災、その時、ソフトウェアエンジニアは何をしたか?」と題して講演。震災直後に役立つソフトウェアの開発を継続的に検討してきたことを報告し、一例として、Google Mapに余震を分かりやすく絵で見ることができるアプリケーションを挙げた。
また、Googleは2010年1月に起きたハイチ地震で「Person Finder」(消息情報)というサービスを提供した。これを、東日本大震災時も日本語ベースで利用。「携帯電話のカメラ機能で避難所の名簿を撮影し、そのデータを集約して、行方不明者の捜索に役立てた」(山下氏)。また、グーグル・ジャパンの社員が開発した「自動車通行実績情報マップ」を紹介した。この地図は、過去24時間に車が通った回数をGPSで計測し、Google Map上に色で表示する。「救援部隊などが、効率よく被災地へ入る際に使われた」(山下氏)という。
さらに、IT開発人材のスキルを東日本大震災に役立てる「Hack For Japan」という活動が全国規模で行われた状況を報告した。3月21日に、関東圏のエンジニア約50人が京都リサーチパークに入り、関西圏のエンジニアと一緒に活動し、インターネットで上がったアイデアをかたちにした。ここからは、被災者が携帯電話から炊き出し情報を入手できるサービスなどが生まれている。「Hack For Japan」は継続的に行われ、オンライン上で日々議論がされているという。山下氏は「非常時に一人でできることは限られている。複数でアイデアを出し、DCを借りるなど、より多くの人を巻き込む活動にすることが重要だ」と知見を述べた。現在、日本国内だけでなく、海外でも被災地に向けた同様の活動が展開されているという。
次に、JAIPAの木村孝会長補佐が、NGNとIPv6導入のインパクトや「World IPv6 Day」などについて話した。総務省が、休止中だった「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」を開き、各社のIPv6対応状況などを公表していることを紹介。このなかでは、NTT東日本が「地域IP網のNGNへの統合を平成24年度をめどに実施する」としていたり、KDDIが「今年6月に全加入者の30~40%にIPv4アドレスの払い出しがあった」ことなどが報告されている。
木村会長補佐によれば、IPv4の枯渇によって、事前の予想では、BフレッツなどでWindows Vistaなどを使っているとフォールバックという現象が発生し、ウェブサイトの表示が遅延したりすることなどが心配されていた。だが、「問題は想定の範囲内に収まった。だが、IPv6化の懸念が解消されたというほどではない」と、ISPだけの対応には限界があり、今後はコンテンツ事業者やベンダーとの連携が求められるとした。
このあと、京都府警察本部サイバー犯罪対策課の木村公也課長補佐が、「サイバー犯罪の現状と対策~京都府警の取り組みについて~」と題して発表を行った。「サイバー犯罪が出てきたのは、Winnyの事件以降、知的財産保護に関して。私は当時、香港の国際会議で講演した。それから、広域の指導官として全国でサイバー犯罪の話をしている」と自身を紹介。その後、サイバー犯罪捜査の重要性に触れ、「ITは多種多様な犯罪のインフラとなり、青少年を取り巻く違法・有害情報が氾濫している」と、インターネット環境がさまざまな犯罪の温床になっていることを訴えた。
インターネット利用端末は、パソコンだけでなく、携帯電話やゲーム機など、多様化している。木村課長補佐は、「これらの新しい端末への対応が放置されている」という。そのうえで、サイバー犯罪の現状を「ネットワーク利用犯罪、コンピュータ電子的記録対象犯罪、不正アクセス禁止法違反の三つがあり、ネット人口が増えるとともに拡大している」として、京都府警の最新の摘発事例を紹介した。例えば、次世代P2P(ファイル共有ソフト)で、産業界の知的財産が盗まれるケースが増えているという。
木村課長補佐は、「これらの事件はなかなか社会の表には出てこない」としながらも、これを摘発しなければ、新たな事犯の温床になるほか、知財に対する甚大な経済的な被害や違法ファイルのネズミ算式の増加、コンピュータウイルスの媒介などが起こることから、「対策を強化している」と語った。また、最近では、YouTubeやTwitter経由で人気漫画の発売前にアップロードされる“ネタばれ事件”という著作権法違反事件が横行している。木村課長補佐は、「京都府警はサイバー犯罪摘発を強化しているので、捜査に際しては真摯な対応をお願いしたい」と、会場のISPやDC事業者に協力を要請した。
最後に、総務省から総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課の鈴木信也課長が「インターネット上の違法・有害情報対策等について」と題し、インターネット利用の問題点について触れた。ネット上の違法・有害情報は、「権利侵害情報、児童ポルノなど違法事案、公序良俗に反するもの、青少年に有害な情報の四つに分類できる」としたうえで、この定義にもとづいた対策を説明。例えば、青少年に有害な情報への対策では、フィルタリングサービスを促進。「プロバイダ責任制限法」によって違法・有害情報の発信者になりうるプロバイダに対し、ガイドラインを定め、自主的な対策を講じるよう呼びかけていると説明した。
「第33回ISP&ホスティングの集い in 京都」は、このあと懇親会に移り、参加者間で情報を交換しながら終了した。(谷畑良胤)
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