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日中ソフト交流商談会が台北で開催、台日連携の具体策協議、「ゴールデントライアングル」具現化へ
2011/06/02 10:33
アジア間の情報ハイウェイやOEM供給など具体策を
KT-NETの林知之委員長は、「KT-NETも3年前にCISAと覚書を締結し、継続して台湾ソフトベンダーと連携を強めてきた。CISAの劉会長のSYSCOM社とも、10年来の付き合いだ。台湾に来ると、故郷に帰ったように落ち着く」と挨拶したあと、KT-NETを紹介。「KDDI研究所と東京システムハウスで、2001年7月に設立した。KDDIの基礎研究である先端技術をベンチャー企業などに提供して、応用や製品化をしてもらう。東京システムハウスは、この両者のコラボレーションを支援している。日本が広大な中国市場へ出て行くことは困難が伴う。中国市場で経験豊富な台湾ベンダーと組んで、中国あるいはグローバルへのマーケットへ一緒に出て行き、成功の確率を増やせればと思う」と語った。このあと、両国のソフト団体代表者によるパネルディスカッションが行われた。テーマは「アジア地域におけるソフト産業発展での台湾の重要性」と「台日連携におけるアジアビジネス拡大に向けて具体的な戦略」。米国の評価調査によると、2010年の世界39か国のなかで、ビジネス環境リスクの少なさでは、台湾は13位、アジアでは4位に位置している。CISAの説明によると「台湾の法人税は17%。法律制度や知的財産権など、条件が整っており、海外とのネットワークができていて、産業が発展する潜在力がある。台湾ベンダーは、経営理念に柔軟性をもっている。欧米先進国と一緒だ」(CISAの蕭烱森日本代表)と、台湾ベンダーと手を組む利点を語った。CISAの劉理事長は、中国大陸で台湾IT関係者の全国ネットワークができており、台湾経由のメリットがあるとも指摘し、「成果を上げる時期にきている」と呼びかけた。
これに対してJISAの杉山副会長は、日本の情報サービス産業の現状を数字で説明したあと、「2008年の第4四半期から、14半期連続で前年同月比割れとなっている。また、IT技術者は、リーマン・ショック前までは不足、リーマン以降は余っている。それに伴って、中国などへのオフョア開発も減っている。テクノロジー面でも、ソフトをプロダクトとして『つくる』時代から、クラウドなどで『使う』時代に変わっている。受託開発型からサービス型への移行が求められている。とくに、グローバル展開の重要性が高まっている。ただ、日本のITベンダーは海外展開に不慣れ。中国市場に行きたくても行けないと悩んでいたところ、台湾の『ゴールデントライアングル構想』が一つのきっかけになると感じ、JISA内で具体的な議論を開始した」と、日本IT産業の閉塞感を取り払うために、台湾の重要性が高まっていると述べた。
アジア圏のスマート化で日本のIT技術が生きる
続いてJASPAの中島会長は、「単独で中国に進出した日本のベンダーには、失敗例が多いと感じている。一方で、台湾ベンダーとの合弁で展開した場合は、7割以上が成功しているようだ。台湾は、日本と中国大陸の両方の文化や商習慣を理解している。アジアの成長力のなかに、どうビルトインするかが問われている。次のIT産業の大きなマーケットは、スマートシティやスマートグリッドなどの創出にある。この点は日本が得意だ。アジアでこれらを浸透させるために台湾と日本の連携は欠かせない」と話した。また、震災後の事業継続や災害対策の一環として、「台湾・中国・沖縄をクラウドで結んで運用し、アプリケーションをSaaS型で提供することなどが考えられる」と提案した。加えて、「厦門などの中国大陸、台湾、沖縄を情報スーパーハイウェイで結び、CADデータなど大容量データの転送などを容易にするということも考えられる」と、三つの地域を高速大容量のインターネット回線がつながれば、経済効果が大きくなると指摘した。
続けて、KT-NETの林委員長が、「台湾は親日で、いい関係が構築できる。台湾国内や、中国をはじめとするグローバルに向けて、日本のソフトが輸出できる何かをつくることが重要だ」と提案。また、MIJSの内野理事長は「台湾の強みや魅力は、中国市場を考えたとき、日本人がビジネスするより明らかにスムーズだということ。『ゴールデントライアングル構想』は、それを踏まえたものだ。IT系のデバイスは、台湾内のITベンダーで、かなりの割合がつくられている。台湾という国の力強さがある。振り返ってみると、日本は何をやっているのかと思う。MIJSは、海外展開をいろいろ考え、加盟各社のパッケージソフトが海外で通用するのかを議論している。それを中国にもっていっていいのか、冷静にみている。成功のルートが読めていないと失敗するだろう」と、現状報告と問題提起を行った。
さらに内野理事長は「極論すると、パッケージベンダーのブランドが中国大陸で残らなくてもかまわない。中国では、販売でのアライアンスが重要。その最右翼が台湾ベンダーだ。今後、台湾ベンダーと共同戦略を策定して、販促やセミナーを開催。成功事例を事例集などにまとめて事業を検証する。場合によっては、台湾ベンダーにOEM供給することがあってもいい」と、具体策を述べた。
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