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日本エイサー 低価格モバイルノートPCで法人市場を本格開拓
2009/12/10 21:45
週刊BCN 2009年12月07日vol.1312掲載
ラインアップ拡充と価格戦略で攻める
エイサーは現在、法人向けに専用モバイルノートPC「トラベルメイト」を全世界で展開している。97年に買収した米テキサスインスツルメンツがもっていたノートPCブランドで、日本でも主力機種として販売。CPUにCeleronなどを採用しながらも国内メーカーの半分以下の価格で提供しているようだ。今回、個人向けに販売する低価格モバイルノートPC「アスパイア・タイムライン」のWindows 7搭載モデルを追加。品揃えに厚みをもたせる。「タイムライン」は、OSにWindows Vistaを搭載し、Windows XP Professionalダウングレードサービスに対応したモデルをすでに販売している。
ラインアップの拡充では「トラベルメイト」にもWindows 7搭載モデルを加える計画。今後、法人向けでは「トラベルメイト」「タイムライン」という二本柱のブランドで展開する計画で、顧客の製品選択肢を広げることで販売台数の増加につなげる。
ターゲットは従業員が100名前後、CEO(最高経営責任者)とCIO(最高情報責任者)が兼任するような中堅・中小企業(SMB)。国内メーカーよりも価格が安く、高性能をアピールして売り込む。販売はダイワボウ情報システム、丸紅インフォテックのディストリビュータに委託する。
これまで力を入れてきたネットブックについては法人向けにも販売するが、携帯電話会社と協業し、データ通信端末と組み合わせた量販店や携帯電話ショップでの格安販売を強化。個人需要の獲得強化にシフトする考え。
エイサーでは今後、モバイルノートPCではバッテリ駆動が8時間、軽量・薄型、低消費電力で高速処理のCPU採用を性能の主軸にした製品を開発。こうした高性能のモバイルノートを「国内メーカーよりも安い価格で提供する」(瀬戸和信・事業支援本部マーケティング部マネージャー)戦略を打ち出している。米ガートナーがまとめた09年第3四半期(7~9月)の全世界PC出荷台数でエイサーはデルを抜いて2位に浮上したが、国内での同時期のシェアは5.1%で7位(出荷台数、IDC Japan調べ)にとどまる。低価格モバイルをテコにシェアを拡大。目標に掲げる11年度内の国内トップ5入りに弾みをつける。
エイサーは全世界でPCを販売している。圧倒的な販売量によるスケールメリットと、販売量に伴う、部品の大量調達によるコストダウンによって、ノートPCの低価格を実現しているのだ。
販売面でもユーザーとは直接的に接点をもたない“インダイレクト”と呼ぶ形態を導入し、国内では大手ディストリビュータを活用することで販売コストを抑えている。その結果、国内メーカーなどよりも低価格でPCを販売しながら、一般的には6~7%といわれているノートPCの利益率よりも高い利益水準を確保しているもようだ。
【関連記事】ネットブックを足がかりに本命での進出
低価格戦略で国内市場を攻略
日本エイサーがモバイルノートPCで国内の法人市場開拓に本腰を入れ始めた背景には、ネットブックを布石に日本でのブランド力を確保した後、国内で需要の高いモバイルノートPC市場にシフトするというマーケティング戦略がある。日本エイサーでは当初からモバイルノートPCを本命にして国内での個人・法人市場の攻略を目論んでいた。しかし、計画当初は日本でのブランド力がほとんどない状況で、市場に参入してもNECや富士通、東芝、ソニー、パナソニックといった国内メーカーに太刀打ちできない環境だった。
そこで同社では「日本のノートPCは高すぎる」(瀬戸和信・事業支援本部マーケティング部マネージャー)をうたい文句に、5万円台と低価格のネットブック「アスパイア・ワン」を2008年8月にコンシューマ向けで日本市場に投入。ネットブックブームを仕掛けて、国内での知名度を向上させた。
日本エイサーでは個人市場でネットブック需要が予想以上に盛り上がったことと、景気低迷で企業のコスト削減意識の高まりを背景に、一時はネットブックでの法人市場攻略も考えていた。
しかし、販売を委託するディストリビュータが企業の需要開拓に力を入れてはいるものの、本格的な広がりまでには至っていない。一方でネットブックによって国内で一定の知名度を確保できたと判断したことから「予定した計画のタイミング」(同)とみて、当初から本命と捉えていたモバイルノートPCでの法人開拓に本腰を入れて乗り出した格好だ。
日本エイサーではネットブック同様、モバイルノートPCでも価格の安さを武器に、国内市場で攻勢をかける。
PCの価格下落が進むなか、国内メーカーなどはデザインなどの付加価値で単価アップを図ってきた。「世界価格」を掲げるエイサーが、国内で価格破壊を進めて存在感を増すことになれば、競合メーカーはその対応策に迫られそうだ。(米山淳)
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