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ニコニコ動画 成長に利益伴わずジレンマ浮き彫りに

2009/12/03 21:45

週刊BCN 2009年11月30日vol.1311掲載

 成長を持続させるも、黒字化はならず——。ドワンゴが運営する国内最大の動画投稿サービス「ニコニコ動画」(総会員数1425万人)は、当初見込んでいた昨年度(2009年9月期)中の単月黒字化を果たせなかった。有料会員数は順調に伸びたが、成長の維持を重視する余り、黒字化が遠ざかるジレンマに陥っている。事業の成長に利益が伴わないネットビジネスの難しさが浮き彫りになった。

ヒットサービスの予測難しく

夏野剛 取締役
 赤字の直接的な原因は、新しいサービスの追加による先行投資の増加。不況で広告収入が伸び悩んだことも足を引っ張った。主にニコニコ動画事業が占めるポータル事業の売上高は、前年度比81.2%増の約32億円と順調に伸びた(営業利益は約18億円の赤字)。

 売り上げを押し上げる原動力になったのが、有料会員の増加だ。会費は月額525円で9月末は期首計画36万人を大幅に上回る51万人だった。実はこの有料会員の伸びは、赤字の原因ともなった新サービス「ニコニコ生放送」が大きく寄与している。

 ニコニコ動画事業の黒字化を担う夏野剛取締役は、「ネットビジネスは成長が止まると会員1人あたりの売り上げ単価が下がる」と、常に成長を続ける必要性を説く。仮に生放送を開始しなければ単月黒字化の余地は残されていたが、それで縮小均衡に陥るのは得策でないと判断した。生放送はライバルで世界最大のYouTubeにはないサービスで、差異化にも役立つ。だが、今後も新たなサービス投入でコストがかさみ、黒字化が遠のく可能性は否定できない。単月黒字化の計画を練っていた1年前には、生放送サービスが有料会員の大幅増加につながるヒットサービスになるとは「予想できなかった」という。

 夏野取締役は、世界に打って出ないとYouTubeのような成功はあり得ないとの認識を示したうえで、「海外のビジネスパートナーの理解を得るには、利益を出せるビジネスモデルの構築が不可欠」とも指摘。今年度(10年9月期)下期には黒字化し、通期でほぼトントンにもっていく方針を示す。動画投稿サービスでビジネスモデルが確立しきれていないなかで、成長と利益をどう両立させるのか、重い課題に直面する。(安藤章司)
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