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ITコーディネータ協会 「実践力」測る指標まとめる
2009/10/13 21:41
週刊BCN 2009年10月12日vol.1304掲載
ITCのスキルレベルなどを明確に
これまで、ITコーディネータ協会では「ITコーディネータプロセスガイドライン」や「ITコーディネータ実務ガイド」といったITコーディネータが仕事の進めるうえでの指標やガイドブックを提供していた。また、従来からITコーディネータの土台となる『専門知識』や、システムや経営などの『前提知識』、業界や政策などの『基礎知識』をまとめたCBK(Common Body of Knowledge=共通知識体系)を整備していたが、いざ「仕事を進めていく」ために必要な要素である、ITコーディネータ自身のヒューマンスキルや技術スキルに対して、具体的に定義していなかった。そこで、昨年から実践力体系の整備を開始した。前田信太郎・事務局部長(育成・認定担当)は、「『知識』だけでは仕事にならない。得た知識をどう生かしていくか、成功、失敗を積み重ねた『知』が重要になる。『暗黙知』もしくは『経験知』という言葉があるが、そういったものを合わせて『実践知』として定義した」という。従来から、「実践力」を有するITコーディネータをいかに増やすかが課題として上がっていた。「自立できるとは、決してすべてを一人でこなせるようになるというわけではなく、スキルの不足分は他のITコーディネータと協力すればいいと考えている。現在約200ほどあるITコーディネータの地域組織は資産の一つだ。人の活用も含めてリーダーシップを発揮してIT経営を実現し、いかにユーザー企業から信頼されるかが『実践力』と考えている」(前田部長)という。自立し、「実践力」をもったITコーディネータを増やすことで、協会の質とITコーディネータ自身の質を高め、世間から評価される姿を目指すという。
「ITコーディネータ実践力体系(案)」は、ITSS(ITスキル標準)、ETSS(組込みスキル標準)、UISS(情報システムユーザースキル標準)といった各職種のスキル標準において、人材評価モデルとして参照する「共通キャリア・スキルフレームワーク」のキャリアレベルとの整合性をとり、1~7段階のスキルレベルを設定する。「共通─」は高度IT人材の人材像や必要とされる知識・スキルに対して7段階のレベルを設けており、国が整備したもの。
「共通キャリア・スキルフレームワーク」でも必要な知識をBOK(=Body of Knowledge)として整備しているが、「経験」についての評価が難しく、明確に定められていない。そこでITコーディネータ協会は、独自に求められる技術スキル、ヒューマンスキルなどを明確に定義する。
これにより、ITコーディネータ自身が自分のスキルはどのレベルにあるかどうかを評価し、目標を設定したうえで自己研鑽につなげることが可能になる。また、ITコーディネータ協会が行う研修においてもなぜそれが必要であるか、その目的を明示できるようになるという。将来的に、上位レベルの認定は協会側が行うことも視野に入れ、検討している。(鍋島蓉子)
【関連記事】資格取得者増加の策となるか
ITCの認知、評価の向上図る
2001年に設立されたITコーディネータ制度は来年で10年の節目を迎える。地域の中堅・中小企業では、大手ベンダーのお墨付きのシステムに飛びついて、よく検討せずに導入したり、あいまいなユーザーのRFP(要求提案書)をベンダーが独自解釈して構築した結果、「使えないシステム」になってしまうなど、さまざまな認識の食い違いが発生している。こうした状況が後を絶たないなか、地場のSIerはユーザーのニーズをきちんと汲み取り、このような食い違いが起きないようにするうえでITコーディネータの資格を有用なものと考え、取得する人が多い。
一方で、ITコーディネータの資格は取ったものの、自身のビジネスにうまく結びつけることができず、更新をやめる資格者が増えている。かつてITコーディネータの状況を取材した際、アクティブに活躍している資格者はひと握りに過ぎないという話を聞いた。
ITコーディネータ協会では、「ITC資格保有者」の人員を増やす施策を打ち出した。その一つが今回の「ITC実践力体系」である。昨年からワーキンググループを立ち上げ、ITコーディネータの人材像・スキル体系の再整理について、検討を行ってきたが、いよいよ、今秋には具体的な内容や方向性盛り込んだものがまとまりそうだ。
ITコーディネータが、ユーザー企業のIT経営を実現するためのスキルについて、自己研鑽意欲を高めるとともに、それにより、社会的な認知度、評価の向上を図る。
その一方で、ITコーディネータの資格者の比率をみると、大手ITベンダー内の資格保有者の辞退が増えている。ITコーディネータの資格を保有する優位性がうまく享受できていない状況を課題としていて、協会側ではこうした大手ITベンダーに対して、資格のメリットを訴えていく目的もあるようだ。(鍋島蓉子)
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