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シスコシステムズ “持たない経営”訴求しSMBを攻略

2009/04/27 21:30

週刊BCN 2009年04月27日vol.1282掲載

「オフィス縮小」提案でNW導入促す

 シスコシステムズ(エザード・オーバービーク社長)は、SMB(中堅・中小企業)市場のユーザー企業に対して、企業経営的な観点からアプローチしてネットワーク(NW)インフラの提供拡大を図る。オフィス規模の縮小など物理的なコスト削減という「持たない経営」を提案することで、ITやNWへの投資を確保するように促す。このビジネスモデルを構築するため、SMBを顧客ユーザーとする販売代理店550社余りと組んで、SMB向け製品・サービスを実際に業務で使いながら、経営コンサルティングのあり方も追求する。

 シスコが提案するのは、先行き不透明な景況感が漂うなか、いかにコスト削減を図るかという手法だ。「この不況の時に、『先進的で高性能なIT/NWソリューション』などと訴えたところで、SMBの財布の紐は締まるばかり。ならば、ユーザー企業が今、本当に求めていることを一緒に考えるべき」と、中村共喜・Channelsマネージングディレクターは考えている。ユーザー企業の多くが売上高を伸ばしにくい状況のなか、シスコはSMB向け経営コンサルティングサービスの提供に踏み切った。

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 経営コンサルの具体的な内容は、まずオフィスの縮小。SMBはオフィスを賃借しているケースが多いことから、「今のスペースのうち、3分の1もしくは2分の1を解約する案はどうかと勧める。むしろ、オフィス自体をなくす勢いの『持たない経営』を実施してもいいのではないかといった提案も行う」としている。毎月支払わなければならない固定費が削減できれば、「大抵の経営者は喜ぶだろう」。しかも、人員削減とは異なり、感情的なしこりが生まれないのも利点という。

 SMBがオフィススペースを縮小した段階で、次に訴えていくのが“どこでもオフィス”だ。「コスト削減によって捻出した利益のうちの少しでもIT化やNWの改善につなげ、社員が仕事をこなしやすい環境を整えてはどうか」と提案する。「オフィスの改善提案と比べれば、直接的に利益が確保できるので財布の紐が緩むに違いない」。こうしたプロセスを経て信頼感を得ていることから、「当社製品を導入してもらえる可能性が高い」と言い切る。

 商材は、ルータやセキュリティ、UC(ユニファイドコミュニケーション)を切り口としたウェブ会議システムなどだ。「SMBがIT化やNW増強でワークスタイルを変革できるのに加え、コスト削減にもつながることをアピールできる」としている。

 課題は、SMBをユーザー対象に据える販社がシスコの拡販策に乗るかどうかだ。そのため、シスコと販社間でウェブ会議システムをベースとしたコミュニティを構築し、トレーニングやセミナー、会議などを行っている。「東北や九州など地理的に離れた販売パートナー同士がオンラインで情報共有できる」という。SMB向け販社に位置づけられる数は、チャネルプログラム「サーティフィケーション」の「PREMIER」「SELECT」で550社を超える。

 現段階では、すべての販社がウェブ会議ネットワークに参加しているわけではないものの、「このネットワークを構築することで、実際にSMBに提供するソリューションを体感できる。販売パートナーのワークスタイル変革にもつながることから、近い将来にほとんどの販売パートナーが参加するはず」と目論んでいる。(佐相彰彦)

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「提案」にシフトするシスコ

 シスコシステムズは今年度(09年7月期)、「Channels」と呼ばれる販社とのパートナーシップを深めていく組織を設置した。この組織の設置によって拡大を目指すのはSMB向け事業だ。

 製品面では、SMB向けローエンド製品を相次ぎ投入。低価格や簡単導入を前面に押し出すことでSMB開拓を進めてきた。結果的に「台数では、前年比50%増前後の伸びを示している」と、中村共喜マネージングディレクターは自信をみせている。

 ところが、課題として浮上したのが「ソリューションベースで売れない」という現実だった。製品を単品で提供する“箱売り”が主流となり、これ以上利益を増やすのには限界がある。そのため、「ベンダーがSMBの経営課題を解決することがカギ」と判断。まずは、同社自身のワークスタイルを変革するため、“どこでもオフィス”を具体化してきただけでなく、「営業担当者のデスクを取り払ったスペースをショールーム化し、販売パートナーに一目で当社ソリューションの利点を分かってもらえるような環境を整えた」としている。

 経営コンサルティングサービスを提供するためには、販社のトレーニングが必須となる。そこで、ウェブ会議システムによるシスコと販社間のネットワークを構築。「いつでもトレーニングが受けられる」環境作りで、販社の営業担当者や技術担当者などが積極的にトレーニングに参加するようになったという。

 ベンダーは“顧客の経営に役に立つITシステムやNWインフラ”を念頭に置きながら提案しているとはいえ、実際にはITやNWサイドの製品・サービスありきで、理念倒れになっているのが実状だ。そういった点では、ネットワーク機器メーカー大手であるシスコが多くの販社を巻き込んで“顧客満足”を高めることに成功すれば、IT・NWの両業界に一石を投じることになりそうだ。(佐相彰彦)
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