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日本HP 東日本で“SMB包囲網” 「王道」路線を再構築

2009/02/23 21:26

週刊BCN 2009年02月23日vol.1273掲載

初モノづくしの改革

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)が中堅・中小企業(SMB)向けビジネスのテコ入れに動き出した。SMBの東日本マーケットを担当する「ゼネラルビジネス営業統括本部」は組織再編、人員増強・再配置を敢行。さらに、日本HPの営業担当員によるユーザー企業への直接提案(ハイタッチ営業)強化やテレセールス部隊との初連携、同統括本部内にパートナー営業の専任組織を新設した。新組織で矢継ぎ早に策を打ち始めた同本部を指揮する竹内英明執行役員は、「これまで手薄だった面を改善し、市場成長率の2倍は伸ばす」と、“王道”の戦略を打ち出し、強気の成長予測をしている。

 「ゼネラルビジネス営業統括本部」は、北海道を除く東日本のSMBマーケットの営業を管轄する。日本HPにはこのほか四つの営業統括本部があるが、それらは(1)金融(2)通信(3)製造(4)流通・サービスといった業種で分けた組織。そうした業種にとらわれず担当する同統括本部は異色の存在だ。

 同統括本部は売る製品やサービス、ソリューションを特化せず、基本的にすべてを担当する。なかでもIAサーバーの拡販にはかなりの力を注ぐ。同統括本部をまとめるのは竹内執行役員で、昨年5月1日に着任している。日本HPではSMBをユーザー企業のIT投資額により区分している。その金額は明らかにしていないが、年商でいえば500億円以下程度の企業がSMBに位置づけられているようだ。

 竹内執行役員は、「SMBマーケットを攻めるうえで体制が手薄」と判断し、断続的に組織再編に着手していた。同統括本部内に「直販営業部」と「パートナー営業部」を設置。直販営業部には、東日本地域でユーザー企業に直接提案し、案件を発掘する役割を担わせた。同営業部の下には、さらに製造や流通、サービス業など、公共機関と金融機関を除いた業種ごとに五つの営業部隊を設置している。「具体的な数はいえないが、かなりの人数をこの部門に配置した」(竹内執行役員)という。

 ユーザー企業には日本HP営業担当者が直接コンタクトするものの、その後はパートナーとともに動く。実際のソリューション提供や製品販売は、各地域の地場パートナーや有力SIerの支社・支店が担当。日本HPは後方支援にまわる。

 案件の発掘、パートナーへの紹介は直販営業部員だけでなく、日本HPのテレセールス部隊も活用。専用スタッフによるユーザー企業への電話提案で案件を発掘し、その見込み客を各地域のパートナーに紹介する体制を整えた。ゼネラルビジネス営業統括本部がテレセールス部隊と連携するのは、「今回が初めて」(同)の試みだ。

 一方、「パートナー営業部」は、日本HPの組織のなかで異色の部隊。5営業統括本部のなかで唯一、ゼネラルビジネス営業統括本部だけがパートナー向け専門営業組織を持つ。そのミッションはパートナーの新規開拓や既存パートナーのHP製品取扱い量を増やすこと。案件の発掘・紹介だけでなく、ユーザー企業の要望に対し、パートナー1社だけでプロジェクトを完結するのが難しい場合は、補完関係にあるパートナーを選定して協業体制を築き、支援を行う仕組みも整えた。

 竹内執行役員は新組織の狙いについてこう説明する。「SMBを開拓するには、パートナーの力が必須。パートナーとの協業を強めるという点で、体制が手薄だった面は否めない」。さらに、「当統括本部は直販をまったく行わない。パートナーとの共栄を最重要視してビジネス展開する」と強調している。「景気後退の影響でかなり厳しい市場環境ではあるが、市場成長率の2倍は伸ばす」(同)と強気だ。異色の組織がSMB包囲網を敷き、マーケットに攻勢をかける。(木村剛士)

 

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サーバーシェア動向に影響必至

 自社営業担当者による案件発掘に、販社への紹介、パートナー同士のマッチング……。これらの戦略は間接販売の必勝パターンというべきか。販社を通じた間接販売を強化するうえで、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)だけでなく、過去さまざまなベンダーの営業責任者が進めてきた戦略の一つだ。今回、日本HPの竹内英明執行役員はその方向に動いたわけだ。

 日本HPで間接販売網構築の一役を担い、マイクロソフトに移籍した窪田大介執行役専務ゼネラルビジネス担当は、マイクロソフトに移って最初に行った組織改革の一端として、テレセールス部隊を強化している。「日本HPに比べてマイクロソフトのテレセールスは手薄」という理由からだった。それだけ窪田氏はテレセールスを重要視していたのだろう。

 日本HPが持つIAサーバーの台数シェアは四半期ベースでトップ、ブレード型だけでいえば通年でナンバーワンの実績を誇る。ただ、竹内執行役員は「全体のシェアほど(SMB市場では)、その数値を体感していない」とも漏らしている。SMBでまだまだ開拓の余地があるとみているわけだ。この戦略が当たれば、IAサーバーのシェアが高まるのは必至だろう。「中小企業でも必ずサーバーは入っている。となると、そこに販路があり、ベンダーがいるということ。ここにどう食い込めるか」。竹内執行役員はこう語っている。地方にある決して規模の大きくないITベンダーの取り込みが、この戦略の明暗を分けることになりそうだ。

 日本HPの戦略の一方で、もう一つの有力外資系メーカーであるデルは、パートナービジネス専門部隊を組織した。間接販売網の構築に本腰を入れて取り組み始めている。直販で急伸した同社が、地方や中小企業市場で慌しく動き始めた事実も要注目。外資系2社の動きが面白くなってきた。(木村剛士)
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