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ジャストシステム 来期黒字化の見通し 国内回帰で収益優先
2008/12/01 21:13
週刊BCN 2008年12月01日vol.1262掲載
海外進出は一旦休止
ジャストシステム(浮川和宣社長)は、苦戦が続くエンタープライズ事業で来期、黒字化する見通しを示した。企業向け主力製品でXMLアプリケーション基盤の「xfy(エクスファイ)」は、海外優先で積極的にグローバル進出を進めてきたものの、予想以上にコストが膨らんだ。企業体力の限界まで迫ったため方針を転換。一部を除いて海外から撤収を進めてきた。その一方で、国内営業体制を強化し、xfyの収益力を改善。北米から端を発した金融不安もあり、日本の最有力ISVの海外進出はいったん休止となるが、懸案だった黒字化にはメドをつける。世界の金融危機が本格化する前でまだよかったよ――。浮川社長は、海外事業をやむなく縮小せざるを得なかったことに言及しながら、安堵と悔しさが入り交じった表情を浮かべる。
xfy事業を本格化してからは先行投資がかさみ、昨年度(2008年3月期)まで3期連続赤字が続いた。純損失が9億円、24億円、47億円と年を追うごとに膨らんだことから、今期に入って一部事業を除いて海外事業を縮小。撤収に関わる特別損失が足を引っ張り、中間期(4-9月期)は20億円の純損失になった。海外でうまくいかなかったのは、エンタープライズのビジネスは商談から受注・売り上げが立つまで時間がかかったため。また、国内パソコン市場の成熟化で、主力のワープロソフト「一太郎」の収益力が弱まっていたところにxfyの海外展開を急いだため、「企業体力を超えてしまっていた」(浮川社長)ことが重荷になったのだ。
売り上げにいち早く結びつけるための事例づくりや業務テンプレートの開発を推進。今年に入ってから全日本空輸や三井住友銀行、米オレゴン州などユーザー企業での納入事例や東芝ソリューションなどSIerでの採用事例を相次いで発表してきた。自社の技術者を動員してシステム構築に当たることで業務ノウハウを吸収。これをもとに営業報告や新薬申請、グリーン調達の文書作成・管理などの業務別テンプレートで短期間での稼働を実現する。納入事例は、向こう1年間で「新たに10事例を発表する」とし、販売パートナーが売りやすい環境づくりに取り組む。
苦戦続きだったが、追い風は吹いている。内部統制の強化で業務文書の記録管理が強く求められていること。もう一つは、企業や団体の財務諸表をXBRL(財務会計用のXML文書)で記述する動きが世界的に広まっていることだ。国内でも、今年4月から電子開示システムがXBRL対応となり、企業の財務諸表はXBRL形式での提出を義務づけられることとなった。米国ではXBRL形式の財務諸表データを多次元分析し、投資判断に役立てる大規模なプロジェクトが進む。これに先立ち、米オレゴン州では多次元データ分析用にxfyを先行的に採用。今後、オレゴン州を手本に「各州でxfyを採用することも十分考えられる」と、手応えを感じている。国際会計基準の標準化も進んでいることから、北米などの海外では主にXBRL関連を軸にxfyビジネスの継続・拡大を目指す。
国内のxfyビジネスはほぼ順調に進んでいることから、今年度(09年3月期)は全社の経常利益ベースでほぼトントンにもっていく。xfy事業単体ではまだ赤字だが、一太郎や日本語変換ソフトATOKなどデスクトップ製品の収益でカバー。ATOKは携帯電話への組み込みで若年層での認知が広がったことや、ライバルソフトの伸び悩みなどから上期の売れ行きは前年同期1.5倍に拡大。9月からはATOKの月額定額サービスを初めており、同サービスの出だしは「予想の2-3倍をはるかに上回る」と自信を示す。
来年度(2010年3月期)は、海外拠点での損失といった「負の要素」がまったくないことから、xfy単体での黒字化にメドをつける。数年かけて国内基盤を増強。収益力をつけ、国際的な経済環境が改善した時点で、「再びグローバルを目指す」と、粘り強く再挑戦を狙う。
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