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國定浩一教授インタビュー デジタル家電起爆剤に関西復権を 地の利生かし中国と連携
2004/10/18 21:11
週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載
関西経済は長く低迷が続いたが、日本全体としては、日銀短観で大企業製造業の業況DIが6期連続のプラスとなるなど景気好転を示す指標が増えている。デジタル家電の好調など、ようやく明るい兆しが出始めている関西経済について、國定浩一・大阪学院大学企業情報学部教授(前りそな総研会長)に聞いた。(山本雅則[大阪駐在]●取材/文、掛川雅也●写真)
景況は2極分化の様相
──関西の景況をどう見る。
國定 10月の日銀短観では全般に良くなったようだが、実際は2極分化しており、一部の好転しているセクターが平均点を押し上げているに過ぎない。大阪を含めた地方や中小企業が遅れているという見方があるが、遅れているのではなく、置き去りになっている側面もある。現在の景気回復と株価上昇は、米国や中国の好況に支えられた部分とリストラを含めた大企業の自助努力に負う部分が大きく、下では犠牲も出ているということを認識して施策を展開していく必要があるだろう。
──デジタル家電の好調は、大型投資計画などで関西経済にも刺激を与えている。
國定 関西では「何もない」という状態が久しく続いていた。それがデジタル家電を中心に、関西に眼が向くようになり、関連産業の集積なども出始めてきている。一部は、三重県などのようにどちらかといえば中部圏であったりするが、場所はどこでもかまわない。日本全体として拡大の動きがあるということが重要であり、関西経済にとっても起爆剤になるなら歓迎すべきだ。特に、商品サイクルが短くなってきていたなかで、薄型テレビなどは既存のブラウン管テレビと完全に入れ替わるまでには時間がある。当該企業の努力と世の中の流れに負う面が大きいが、やっとそういう商品が出てきたという感じだ。
民間のポテンシャルは高い
──今後の関西経済の進むべき道は。
國定 元々、関西圏は中小企業の集積地であり、民間のポテンシャルはある。97年、98年の景気後退で、こてんぱんにやられ、尾を引いていたが、最近では中国との関係がまるで地続きであるかのように変わってきている。9月に関西経済界のミッションで上海を訪問したが、以前に比べ現地の経営者が格段に若くなり、日中の若手リーダーがジョイントベンチャーを組んだり、一緒に発展していこうという雰囲気が出てきている。互いに補完し合う形で、マーケット自体が融合しつつある。カタカナ企業(外資系企業など)が東京に比べ少ない大阪だが、飛行機なら2時間というメリットを生かし、資本や技術などの連携を図っていくべきだ。
──ITについても、大阪府や大阪市などが振興を図っている。
國定 私自身、大阪府行財政改革有識者会議の委員だが、地に足が着いた形で、前向きの施策を展開するようになっていると思う。現実に活き活きしているのは東京であり、マーケット規模も違う。しかし、IT関連の起業家が見ているのは、企業をサポートするような制度があるかどうかだ。大きな流れはともかく、大阪にも魅力があるということを訴求する細かな積み上げが大事だろう。負の遺産を解決しなければならないが、一方で今こそ種を蒔いておくことも公の責任だ。
──熱烈な阪神ファン、プロ野球ファンとしても有名だが、IT関連企業がプロ野球参入を目指す動きをどう見るか。
國定 バファローズの存続を考える会合で、ライブドアの堀江貴文(社長兼最高経営責任者)氏とは2度ほどお会いした。(当時の買収に関する)企画書も見せてもらったが、インターネットを使って若者を取り込み、情報発信などで収益を上げるなど、非常に優れた内容だった。楽天の三木谷浩史(代表取締役会長兼社長)氏も同様だろうが、新しい経営のアプローチを数多く考えており、かつての著名な若手経営者に並ぶ、いわば天才かもしれない。どちらが参入しても、他の11球団も目が覚めて経営努力をするだろう。これは単にプロ野球の問題ではなく、構造改革であり、経済の問題だ。
【略歴】1940年、東京都出身。東京大学法学部卒業。64年旧大和銀行(現りそな銀行)入行。90年取締役東京企画部長、96年専務、98年大和銀総合研究所(現りそな総研)社長を経てりそな総研会長。03年10月から大阪学院大学教授。関西経済同友会海外交流委員長、大阪府行財政改革有識者会議委員、関西明るくやろう会代表世話人、阪神タイガース私設応援団・IT会常任理事などを務める。
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