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次世代オンラインショップ、生鮮食品のニーズに対応 地域限定のサービスが需要喚起
2004/06/14 20:49
週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載
米マサチューセッツ州に本社を置くスーパーマーケットチェーン店のストップ・アンド・ショップが、生鮮食品のオンラインショップを始めた。いわゆるクリック・アンド・モルタル型のオンラインショップだが、ウォルマートに代表される従来のオンラインショップの多くは、生鮮食品は扱っていない。
米国のスーパーマーケットでは、生鮮食品だけではなく、家庭雑貨全般からレジャー用品、各種の家電まで販売されていることも珍しくなく、購入したものを宅配するサービスも一般的である。そのため同社も、生鮮食品の宅配サービスを「これまでのサービスの延長」として位置づけている。
かつてのシリコンアレー発の代表的なベンチャー企業に、コズモ・ドットコムがある。同社が提供していたサービスとは、市中で販売されているピザやハンバーガー、さらには各種雑貨類までをオンラインで受注後に各家庭へ宅配するというもので、都市部では結構な人気を博していた。すでにビジネスは閉鎖されているが、そのビジネスモデル自体は間違いではなかったと考えられている。多忙なビジネスマンが多く利用していたニューヨークやサンフランシスコなどでは、現在でもコズモの廃業を惜しむ声は少なくない。
オンラインショップのメリットの1つに、その広い商圏が挙げられる。ネット環境下にあれば業種やエリアに関係なく、まさに世界中の潜在顧客を対象にできる。しかしオンラインショップの多くが、納品手段や支払方法、そして使用言語や国別の税制などによって、ある程度エリアや顧客層を絞っているのが現実であり、ある程度の制限は決して消えてなくならない。そしてストップ・アンド・ショップのサービスは、このネットビジネスの足枷を逆手に取ったものと言える。
ストップ・アンド・ショップは、ネット経由での売り上げに関して、個別の数字は公表していない。しかしコズモの例を見るまでもなく、この種のサービスが一般に普及すれば、一気に市場が拡大する可能性は高い。既にニューヨークではフレッシュ・ダイレクトのような企業も出現している。生鮮食品も扱うため、宅配先が近郊に限られることから必然的にそのサービス対象エリアは狭く、一見ネットのメリットを無駄にしているかのようだ。
しかしこの事例には、より生活に密着した次世代のオンラインショップの姿が浮かび上がってくる。ネットビジネスの新時代においては、何らかの「制限付き」が成功のカギかもしれない。(田中秀憲)
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