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中国eコマース市場、ネットバンクが伸長 オークションの成長がカギ

2004/04/26 20:44

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 中国eコマース(電子商取引)企業の2003年12月決算の業績が大幅に好転している。昨年は新型肺炎SARSのまん延による非接触型経済の流行という恩恵を受けたことも、長期低迷から脱する契機となった。しかし、今後の普及には障壁も存在しているようだ。一般消費者の視点から、eコマース市場の展望を探った。

 サーチナは、2004年4月発行の「中国生活者の生活実態-サーチナ中国白書2004-2005」(サーチナ総合研究所編著)の刊行にあたり、「生活の中のITに関する調査」を実施した。調査は、中国全土に配したモニター男女5000人に対して行ったオンラインアンケート方式によるもので、期間は04年3月5日から15日まで。

「今後利用してみたいオンラインサービス」を聞いたところ(複数回答)、オンラインバンキングとの回答が37%を超えて最も多くなった。次いで、オンライントレード(30%)、eラーニング(28%)、チケットのネット予約(26%)と続いた。

 オンラインバンクは、中国の銀行業界で急速に成長している分野である。各行がシステム強化やページのリニューアルなどを繰り返していることも今回の結果に反映していると予想される。また最近では、一部の銀行が複数のネットショッピングサイトと連動したオンライン決済の新サービスを提供し、人気を博している。「今後の決済方法の方向性」という質問に対しても、ネット決済とクレジットカードが3割に達するなど、非現金化が進んでいくと考える消費者は多いようだ。

 しかし、中国の伝統的な消費観念からeコマースの大々的な普及は困難であるとの見方は根強く残る。中国パソコン最大手の聯想(レノボ)がデルモデルの直販形式採用を導入していく方針を示したが、オンライン取引の信用欠如などの問題からすでに苦戦が予想されている。デルでさえ、中国市場では企業を装ったブローカーが、パソコンの大量購入後、個人用パソコンとして一般市場に放出している事例が報告されている。またアムウェイ、エイボンなどの海外大手直販店は、中国市場で店舗販売形式に転換することで業績を伸ばすなど、中国での伝統的な店舗販売の強さを証明している。今後の普及に大きな障壁となりそうだ。

 また、中国ではBtoC(Business to Consumer)に比べて、ネットオークションに代表される消費者同士の取り引きCtoC(Consumer to Consumer)の普及はいまだ進んでいない。その中で今年に入り、中国3大ポータルの1つである新浪網(SINA)と米ヤフーがオークションサイトで提携したことが注目される。「現在利用しているオンラインサービス」において(複数回答)、CtoCは11%程度に止まった。「今後利用したいサービス」では、21%に達している。今後のeコマース全体の成長にとっても大きなカギとなりそうだ。(サーチナ・吉田雅史)
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