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ディズニー帝国、デジタル時代の買収劇 米ケーブルテレビ新会社が攻勢

2004/02/23 20:21

週刊BCN 2004年02月23日vol.1028掲載

 アメリカ最大のケーブルテレビ会社、コムキャストが2月11日、ウォルト・ディズニー社の敵対的買収に乗り出した。当初提示額約660億ドル。電撃発表によりディズニーのマイケル・アイズナー体制は秒読み態勢に突入、エンターテインメント業界の巨人をめぐる買収レースの幕は切って落とされた。一方、ディズニー側は買収提案を拒否。今後の展開に注目が集まる。

 CGアニメ制作のピクサーとの契約更新が物別れに終わったと思ったら、今度は“乗っ取り宣言”である。災厄続きのディズニーは9.11以降、頼みのテーマパークがテロ攻撃対象となって収入が頭打ちの状態が続いている。「弱った巨象を落とすのは今」ということか。

 合併が成立すると年間収入470億ドル、世界最大のメディアコングロマリットの誕生となる。現在トップのタイム・ワーナーは、昨年の収入が396億ドル。同社に関しては2001年にAOLが買収して今の規模に成長した。が、ネットバブル崩壊でAOL株が急落し、怒った旧タイム・ワーナー陣営が旧AOL経営陣を放逐。社名からご丁寧にAOLの3文字を消し去った暗い過去がある。

 コムキャストはAOLよりは将来性が見込まれる存在だ。ここは電話会社とAT&Tケーブル部門が91年に合体して生まれた新会社。本社はフィラデルフィアにあり、最大株主であるロバーツ一族の御曹司、ブライアン・ロバーツ氏がトップを務める。電話とケーブル──ブロードバンド2大配給網を押さえた以上、コンテンツを欲しがるのは当然の流れだ。

 AOLがダイヤルアップ接続時代の王者だったのに対し、コムキャストはブロードバンド時代の王者。昨年、同社は高速インターネット接続部門の収入が前年比52%増の23億ドルに達した。 「ディズニーは娯楽産業のデジタル革命で資本化に失敗した」。ディズニーの落ち度を専門家たちはこう指摘する。28年に「蒸気船ウィリー」を生み出してアニメーション革命を起こしたのは、今は昔。デジタル時代のディズニーは既得権益のアニメ独占体制にしがみつき、映画著作権の延命に執心してディズニー法案を通す離れ業こそやってのけたが、デジタル部門の展開は完全に乗り遅れている。

 例えば無料が常識のオンラインに有料サービスで参入して頓挫した。「Go.com」という用途不明なポータルでは7億9000万ドルをドブに捨て、検索エンジンのインフォシークは最悪のタイミングで買収した。そしてトドメが先月のピクサーとの破局である。「トイ・ストーリー」や「ニモ」など近年最大のヒット映画を生み、泣かず飛ばずのご本家ディズニーの屋台骨を支えたCG製作会社を手放した決断は、「ディズニー最大の失策」と見られている。

 命運尽きたディズニー帝国。しかしブランド力は不動だ。買収は複数参入が予想される。ジョブズの名も囁かれる中、最後の勝者は誰なのだろう?(市村佐登美)
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