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米国自治体システム一部を順次Linuxへ 現行ライセンス料が財政圧迫

2004/01/19 20:19

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 自治体システムの市場に変化が出てきた。これまでは大手による既存システムのライセンス使用が中心だったが、莫大な経費を必要とせず、かつ柔軟性の高いシステムの実現を目指し、Linuxへの切り替えを検討するところが出てきつつある。今後の市場争いを示唆する動きは、すでに州レベルで始まっている。

 米国南部、テキサス州の州都オースチン市で、同市のITシステムをLinuxに置き換えることが検討されている。これまではマイクロソフトのウィンドウズOSを採用してきたが、同社に支払うライセンス料の高騰などから、将来は同市のシステムの一部を順次Linuxに切り替えていくという。

 そもそもオースチン市は、IT/ハイテクの街として知られている。小高い丘陵地に位置するため、西海岸のシリコン・バレー、東海岸のシリコン・アレーと並び、シリコン・ヒルとも呼ばれている。周辺にはハイテク関連産業が多く、土地柄的にもITに精通した地域だ。そのため優秀な技術者やコンサルタントの助言を仰ぎやすく、結果としてこのような計画を実行しやすい環境にあったといえる。

 現在、同市のシステムでは、その重要な機能のいくつかがマイクロソフトのアプリケーションソフトでしか使用できず、ユーザーである市職員から非常に不便であるとの声があがっている。また、2004年末まで継続するマイクロソフトへの年間300万ドル以上のライセンス料が、市の財政を圧迫しているという。

 システムの一部をLinuxに切り替えることにより、今後の開発に要するコストなども長期的に軽減していくことが狙いだ。

 現在、同市は30台ほどのパソコンを使用して各種のテストを続けており、今後は徐々にテスト用のパソコンを増やしていく計画だという。今回のテストはOSだけではなく、実際に使う機会の多い各種のアプリケーションソフトにも及び、これらにもオープンソース製品が含まれているとのことだ。

 世界的に見るとIT市場の売り上げのうち、政府や自治体の占める割合は約1割。今後もLinux陣営の成長は期待されている。すでにマサチューセッツ州では、オープンソースソフトの使用を法案として制定化しており、多くの自治体がこれに続くと考えられる。市場を奪われるマイクロソフト側も、料金の値下げやさらなる営業活動の強化で対抗する構えだ。

 毎年ニューヨークでは、新年早々にLinux Worldという展示会が開催される。このイベントは当初の技術オタクの集会から脱皮し、ここ数年は現実のビジネスにいかに融合するかを模索する場所となっている。

 今年の開会までにはオースチン市での出来事は、参加者全てが把握しているだろう。地方自治体が今後具体的なターゲットとして焦点を浴びるのは必至であり、多くのライバルがしのぎを削るに違いない。(田中秀憲)
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