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アップル製音楽ソフト、ウィンドウズに進出 人気追随に向け販促拡大

2003/10/27 19:35

週刊BCN 2003年10月27日vol.1012掲載

 米アップルコンピュータは10月16日、人気のデジタル音楽管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)」のウィンドウズ版を発表した。今春快調なスタートを切ったマック版同様、この無料ソフトを使えば「iTunesミュージックストア」にワンクリックでアクセスし、1曲99セントで楽曲のダウンロードが可能となる。ファン待望の進出は、デジタル音楽の有料配信に新風を巻き込んでくれるのか?

 スティーブ・ジョブズCEOがウィンドウズのロゴを背に壇上に立つ――。すこぶるミスマッチだが、これがマックOSがシェア5%以下まで縮んだ21世紀の現実だろうか。

「iTuneは、恐らくこれまで書かれた中で最高のウィンドウズ用アプリケーションだ」。米サンフランシスコ市で開かれた記者発表で、アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEOはこう気炎を上げた。

 同社のiTunesミュージックストアは、大手5レーベルとインディ系200社が提供する40万曲以上の楽曲を売るサービス。同氏がアニメスタジオ「ピクサー」の活動を通してハリウッドに培った強力な人脈をテコに打ち出した“99セント均一”というシンプルなサービスは、“デジタル音楽ストア初のユーザー・フレンドリーなサービス”と評価された。

 その人気のほどは、マック版が開設半年足らずで前人未踏の1300万タイトルを売り切ったことでも明らか。

 ウィンドウズ版はしかし、マック版のような一人勝ちというわけにはいかない。似たサービスには「ミュージックマッチ」や「バイミュージック」があり、今月はナップスターの有料サービス開始も控えている。一方ではリアルネットワークス、デル、アマゾンなど大手追随の動きもある。

 これらライバルはマイクロソフトのWMA形式もサポートしており、同社の携帯用デバイス40種とMP3ソフトでも楽曲の再生が可能だが、アップルで買った楽曲は同社独自のコンテンツ保護技術のため、同社の携帯用MP3プレイヤー「iPod」あるいは「Quicktime」でのみの再生となる。「これはウィンドウズユーザーから選択の幅を奪う戦略だ」、そうマイクロソフトがゴネるのも無理はない。

 サービスの“拡張性”より、むしろ“質”で勝負したいアップルとしては、一にも二にもプロモーションである。

 今回の発表に合わせて同社は、AOLと提携を行い、AOLの2500万ユーザーがアップルのストアから直接楽曲が購入できるようにした。また、最高視聴率をさらう新年のスポーツイベント「スーパーボウル」に向けては、ペプシと組み、1曲無料ダウンロードのおまけが当たるキャップ3億個を用意。マック版ストア半年分の売り上げの実に7倍に相当する1億曲を当選くじとしてばら撒く、とてつもない大判振舞いを予定中だ。

 アップル製ソフトがウィンドウズ市場にどこまで食い込めるか、今後の鞘当てが楽しみだ。(市村佐登美)
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