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Blaster亜種を撒いた18歳高校生を逮捕 レベルはハッカー界の序二段程度
2003/09/08 19:32
週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載
「世界のハッカーに告ぐ。手錠はサイバー用ではない。本物だ」――。米ワシントン州西部署のジョン・マッケイ検事は逮捕後の記者会見でこう警告した。
193cm、145kgの巨体を揺さぶってミネソタ州の法廷に現れたのは、18歳の高校生ジェフリー・リー・パーソン容疑者だ。
前夜のうちに“犯人は10代”という速報は流れていたが、色あせたシャツにスニーカー、てっぺんだけ金髪に染めたその姿は普通の若者と変わらない。
もっとも、この彼が自宅に置いた7台のコンピュータ(8月19日の家宅捜査で押収)で1からコードを書いたわけではない。原作者不明のまま、コピーの亜種“BlasterB”を撒いた方が先に逮捕となった。被害推定8000台。
犯人特定の決め手になったのは、感染したマシンの接続先サイト(www.
t33kid.com)だ。コード中のファイル名(teekid.exe)にネット上で使うハンドルネーム(teekid)をつけて自己アピールした点も災いした。間抜けな話である。
1999年に大量メール送信型ウイルスで逮捕されたデイヴィッド・スミスが、昔行きつけていた店の子の名前(メリッサ)を命名したことが、まるで奥ゆかしくすら感じられる。
通常、ハッカーは痕跡隠しを忘れない。ある米コンサルティング会社がマスコミに語ったところによると、過去5年間に悪玉ウイルスを作った形跡があるハッカーは150人もいるが、身元が割れたのはわずか20人という。
専門家の話によれば、今回のような亜種は原作をほんの少し書き換えるだけで簡単にできてしまうらしい。しかも、コードはダウンロードサイトが世界に5万とある(実際には推定約3万)。最悪の場合はプルダウンでメニューを選ぶだけで出来上がりというわけで、ジェフリー容疑者は言うなればハッカー界の序二段といったところだ。
それにしても8月はひどかった。「ブラスター」が一段落したと思ったら今度は大量メール攻撃の、その名も「ソービック」。マサチューセッツ工科大学のシステムなどを停止に追い込んだ。
次にロッキードのネットワークをダウンさせた「ナチ」が追い討ちをかける。
テックウェブニュースによると、ネット上では現在アクティブなウイルスで推定8万、1日に登場する新型は同5-15件に上るという。
逮捕で一時はなりを潜めても、またすぐに元気を取り戻すのが過去のハッカー界のお決まりパターンである。用心に越したことはない。(市原佐登美)
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