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ECの買い物代金はマイレージで払う?

2003/05/26 19:20

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

 電子商取引決済で大きく業績を伸ばしていたペイパルを昨年7月に15億ドルで買収したイーベイは、両社機能の連携による相乗効果を最大限に生かすための戦略の1つとして、イーベイ決済権の貨幣化を推し進めている。航空、ホテル業界が運用するマイレージがその第1歩となった。

イーベイの新しい試み

 

 「イーベイ・エニシングポイント」と命名されたこの新しいプログラムでは、アメリカン、ミッドウェストの両航空会社、及びヒルトンホテルが運用しているマイレージとイーベイ決済の主要機関であるペイパル専用のドル通貨との間で、それぞれ個別の固定相場制による双方向の両替が可能になった。

 アメリカン航空の1万3889ポイント、ミッドウェスト航空の2万202ポイント、及びヒルトンホテルの10万ポイントが、それぞれ1万エニシングポイントに換算され、1エニシングポイントはペイパル口座で1セントへの両替が保証される。

 これによって、これまで新たな航空券購入のための資金やクレジットカード消費への支払いの一部に充当する目的に利用されてきたマイレージが、イーベイ市場での決済手段に直接的にリンクした。

 世界のさまざまな市場で多様に運用されている多くの地域通貨や業種別通貨を個別に取り込んでいくことで、イーベイ市場での決済権を一般通貨化してしまおうとするイーベイの壮大な試みの第1歩が踏み出された。今回のイーベイ・エニシングポイントとマイレージとの連携発表は実に画期的な出来事だといえる。

 飛行機を利用するたびにポイントがたまるエアーマイレージシステムは、航空便を利用する米国ビジネスマンにとって大変に魅力的なサービスだ。

 積み上げたマイルを家族旅行の費用に充てるために、自分の指定する会社の航空券しか購入しないと宣言する米国ビジネスマンは多い。貯めたマイレージはホテル、レンタカー、更には通常のクレジットカードの決済に充てることが可能なため、マイレージはほとんど通貨と同様のものと理解されている。

 「飛べば飛ぶほどお金がたまる」。これが米国における高い飛行機利用動機を支え続けているといっても過言ではない。

 もっとも、同じ会社の社員の間でも、営業など、飛行機を利用できる人だけが利用できるこのマイレージサービスは、一見すると不平等の極みであり、米国のような市民平等を主張するお国柄で活発に運用されている実態は一見すると不思議に思えるかもしれない。

 しかし誰でも飛行機に乗ればマイレージを利用できるという機会均等、いろいろなサービス無料で手にすることができる魅力、航空機業界という米国経済の屋台骨をささえる業界の政治力、更には企業での役職が高くなればなるほどマイレージの魅力が大きくなるという点で、このマイレージシステムは米国社会の中で命脈を保っている。

 この実態は、米国社会をひも解く鍵として見ても大変に興味深いもののように思われる。(寺原 孝)

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