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オフィス2003、XML機能は限定公開 完全データ互換性から後退か

2003/04/21 19:17

週刊BCN 2003年04月21日vol.987掲載

 ドキュメント書式の新しい標準として、XMLは既に市民権を獲得している。マイクロソフトは、次期バージョンのオフィススイートにおける主要機能拡張項目のひとつとして、このXMLへの対応を表明している。しかし、オフィス2003の一般利用者向けバージョンにはその新機能が搭載されないという。マイクロソフトによるオフィス書式公開の先延ばし戦略を追う。

 マイクロソフトは、オフィス2003のリリースにより、ユーザー独自のXMLスキーマによるオフィスデータへのアクセス機能を提供すると過去1年以上に渡って説明してきた。

 しかし、新製品の発表を目前に控え、マイクロソフトはこの新機能をオフィス2003シリーズのうちの最高価格帯に位置するエンタープライズエディションとプロフェッショナルエディションの2種類にしか搭載しないと発表した。

 また、オフィス文書のXMLデータをほかのアプリケーションで読み書きするために必要となるXMLスキーマ「ワードML」は、いまだマイクロソフトから完全には公開されていない。

 そのため、たとえデータをオフィス2003からXML書式で書き出したとしても、このワードMLがない限り、オフィス2003以外のアプリケーションを利用してXMLデータを完全に読み込むことはできないことになる。

 もちろん、データのフィルタリング機能を提供するサードベンダーから追って提供されるであろう独自解析によるワードMLを利用して他社アプリケーションがオフィス2003のXMLデータを編集する場合、独自解析によるワードMLがマイクロソフトのものと完全互換であれば、この編集されたデータを再びオフィス2003に読み込むことが可能になるだろう。

 しかし、他社アプリケーションがXMLスキーマを少しでも拡張してしまえば、オフィス2003の最高価格帯となる2種類のバージョンに搭載されるユーザー独自のXMLスキーマを扱う機能がなければ、このデータは正確に読み込むことができなくなる。

 これでは、マイクロソフトオフィスの一般バージョンでは事実上他社アプリケーションとのデータ相互運用性を自ら放棄していることになる。

 過去1年にわたってマイクロソフトが高らかに宣伝してきたオフィスデータの公開という姿勢の方針転換であると言える。

 ユーザー独自のXMLスキーマ機能をもたないバージョンのオフィス2003を購入した場合、データをXML書式で書き出せるという意味ではXML対応と言えるかもしれない。

 しかし、このデータはオフィス2003でしか正確に編集することができない。

 実際には今までのワードやエクセルの書式と何ら変わらない、事実上のマイクロソフト依存書式となるのである。はたしてオフィス2003のXMLはどこへ向かうのか、業界全体が注目している。(寺原 孝)
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