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過去との決別と将来への一歩へ 2002年、ニューヨークを振り返る
2002/12/23 16:49
週刊BCN 2002年12月23日vol.971掲載
2002年のニューヨークは明確に「以前」と「以後」に分けられる。われわれにとって9月11日以前は全てが「テロ事件後最初の~」であった。クリスマスも独立記念日も、あらゆる催事が一昨年との比較だったのだ。だがアメリカは今ようやく過去と決別し、将来への一歩を踏み出し始めたようだ。
ワールドコムなど巨大企業の不祥事から、連続スナイパー事件まで、派手な事件が目についた一般報道に比べ、今年のIT関連はやや印象が薄い。そのようななか、意外な成長を遂げたのは「オンライン恋人探し」だ。今、全米では新しく生涯の伴侶を求めたり、結婚へ踏み切るカップルが激増している。テロ事件の影響といわれるこの現象により、これら恋人探しのサイトは、不景気故に人気の「就職斡旋サイト」と共に思わぬ活況を呈している。もちろん恋人探しも就職斡旋も「過去との決別と将来への一歩」の意識が根底に流れているのは言うまでもない。
02年の感謝祭・クリスマスのギフト商戦は、前年比148%を見込まれ、こればかりは不景気などどこ吹く風だ。しかもオンライン・ショッピングはそのうちの4分の1程を占めるとされ、その傾向は益々顕著になってきている。この時期の多額の支出には、多くのアメリカ人が毎年頭を悩ますのだが、ニューヨークでは、ある女性が、自分自身の借金を解消する為、広く援助を募るサイトを立ち上げた。その結果、彼女は集まった寄付金で負債を清算。卓越したアイデアと行動力による意外なネットの利用法は、各方面で話題になった。これも彼女にとっての「過去との決別と将来への一歩」である。
「過去との決別」と言えば、新型のiMacもそうだ。その斬新なデザインがヒットのカギとなったのは言うまでもなく、これまでのパソコンとは明らかに一線を画す。市場でも受け入れられ、爆発的に売れた。一方、従来路線を踏襲/発展させ、さらなる高機能化を進めた各種PDA類は、逆に多岐で乱雑になった商品構成が仇となり、期待された成果を得られなかった。
今、海外から見る日本は、過去の負債に悩みながらも、しかし具体的な行動はなく、ただ流されているだけかに見える。今のアメリカの状況を見れば、行動力と決断力こそが「過去との決別」を実現し、「将来への一歩」となるのは明白だが、残念なことに日本にはその気配はない。小雪が舞い散るクリスマス前のとある日、観光客で賑わうタイムズ・スクエアで、あの「ジンジャー」を見かけた。近年マスコミを騒がせてきたこれもまた、「将来への一歩」といえる。来年こそは日本からも「ジンジャー」のような夢のある「将来への一歩」を期待したい。(田中秀憲)
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