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<10大ニュースで振り返る 総括!2002年IT業界 海外編>深刻化したIT不況 新たな動きが胎動

2002/12/23 16:49

 2000年秋口から始まった世界的IT不況は02年、より深刻になった。不況で巨大テレコムが倒産したり、生き残りの合従連衡も加速し、ヒューレット・パッカード(HP)のコンパック買収も起きた。UNIXの雄、サン・マイクロシステムズの苦戦も続く。一方、マイクロソフトの独禁法係争はほぼ終結し、適正な業界競合復活も期待される。巨人IBMは復活仕掛人ガースナーCEOが退任し、パルミサーノ新CEOの時代となった。IBMは新しいIT利用「オンデマンド時代」を演出する。IT業界にはメーカー独自仕様からオープンスタンダードへの潮流も起きた。中国も巨大IT市場の仲間に入った。(中野英嗣)

【10大ニュース 海外編】
・未曾有の世界IT不況、複雑に要因絡み合う
・欧米テレコムの危機、ワールドコム倒産
・HPがコンパック買収、カペラス社長が退任
・ガースナー氏退任でパルミサーノCEO誕生
・マイクロソフト独禁法裁判、ほぼ終結
・サン凋落続く、Linux市場へも参入
・デル、世界Wintel市場で独り勝ち
・IBM、オンデマンド発表、”所有”から”時間を決めた利用”へ
・中国に携帯電話、パソコンで巨大市場誕生
・オープンソースのLinux、エンタープライズ時代に突入


未曾有の世界IT不況、複雑に要因絡み合う

 2000年秋口からの世界的経済低迷と共に始まった世界IT不況は、02年になっても回復への出口は見つからなかった。

 世界的にパソコン出荷は低迷し、サーバー単価はピークの00年に比べ30%も下落した。これらに代わる次の主役も見えない。米調査会社IDCは、世界IT投資はピーク時より6%も減少したと発表した。

 今回のIT不況は需要循環サイクルによるものではなく、構造的要因が複雑に絡む現象と捉えるべきだ。ウォールストリートは03年もIT市場は低迷し続けると警告する。

欧米テレコムの危機、ワールドコム倒産

 米テレコム(通信サービス)は巨額M&Aを繰り返し、欧州は第3世代携帯電話免許取得に巨額を投資し、米欧ともにそれぞれ5000億ドル(60兆円)もの負債を増やしてしまい、業界全体が危篤状態に陥った。さらにワールドコムなどの不正会計も発覚し、同社は倒産した。

 光ファイバー網も過剰で米国での利用率も僅か2%とも報告された。欧州テレコムは再度の国有化案も浮上。テレコム業界はコンピュータ、通信機器の巨大市場で、この投資抑制もIT不況要因だ。

HPがコンパック買収、カペラス社長が退任

 ヒューレット・パッカード(HP)が創業者一族株主反対を押し切ってコンパックを買収し、売上高859億ドルのIBMに迫る729億ドルの巨大新生HPが誕生した。

 しかし合併過程で製品統合やチャネル戦略の混乱が続き、パソコンではデルのシェア拡大もあって新生HPの前途は必ずしも楽観できない。さらに旧コンパックCEOで新生HP社長に就任したM.カペラス氏が退任してしまった。

 米国ではパソコンでのデルと共に、エンタープライズではIBMの強さが目立ち、HPの奮起をユーザーが期待する。

ガースナー氏退任でパルミサーノCEO誕生

 1993年、瀕死状態の“巨象”IBMCEOに就任し、見事に復活させたL・ガースナー氏の後任に、IBM生え抜きのS.パルミサーノ氏が就任した。異業種ナビスコからIBMに転じたガースナー氏は同社を世界最強のITサービス会社へ転身させた。

 後任のパルミサーノ氏は、「IT業界で最も攻撃的ビジネスマン」と恐れられたこともある。世界のIT業界が未曾有の不況に苦しむなか、パルミサーノCEOは「チャネルフレンドリー」を標榜し、再び世界市場を支配するIBM像を描いている。

マイクロソフト独禁法裁判ほぼ終結

 マイクロソフトの反トラスト法違反裁判で和解案を米連邦地裁が承認したことで、一部州の控訴は続くが、係争はほぼ終結した。

 これでマイクロソフトはOS技術の一部開示、同社競合ソフト採用メーカーへの報復措置を禁じられ、パシコンソフト業界の競合による市場活性化も期待される。

 しかし一方では、ソースコードを公開するLinuxの普及も進み、同社を取り囲む市場環境も変化している。そのため同社は、技術を特定機関に公開するシェアドソース戦略も展開し始めた。

サン凋落続く。Linux市場へも参入

 ドットコム崩壊と共に始まったUNIXの雄、サン・マイクロシステムズの凋落は2002年も続き、6月通期決算売上高は前期比32%減の125億ドルとなり苦戦が続く。

 UNIX市場を独走してきたサンには、ヒューレット・パッカード(HP)やIBMが製品強化で挑み、さらにローエンドではLinuxインテルサーバーに浸食された。

 そのため、サンはこれまでの自社技術のみのシングルアーキテクチャを放棄し、Linuxサーバーを発売すると共に、Linuxパソコン投入も公表して同社S.マクネリー会長は意気軒昂ぶりを誇示する。

デル、世界Wintel市場で独り勝ち

 デルによるパソコン、インテルサーバーのWintel世界市場で独り勝ちが決定的となった。2002年7-9月期もヒューレット・パッカード(HP)、IBMなどコンペティターがパソコン出荷台数を大きく減らすなか、デルだけ台数を23%も増やし、コンパックを買収して世界シェア1位となったHPの逆転に成功した。

 サーバーも大きく出荷を増やしたデルは近々四半期単位で国内でもトップの座をうかがう。デルはWintelで大成功した自社モデルで、プリンタやPDA、通信機器市場へも参入し総合化へ突き進む。

IBM、オンデマンド発表“所有”から“時間を決めた利用”へ

 IBMは2002年10月末、ユーザー市場の変革に対応し自社ビジネスを即刻変革し、これを支えるITをベンダーが従量制料金で提供する「e―ビジネス・オンデマンド」という新しいビジネスを発表した。

 今後の企業ITはこれまでの自社導入による「所有」形式から脱し、共用ITを「利用」する形態へシフトするとIBMは説明する。

 IBMはこのITビジネス具現化のため技術開発プロジェクト「イライザ」を推進し、これによるオートノミック、グリッドコンピューティング戦略で他社を引き離す。

中国に携帯電話、パソコンで巨大市場誕生

 人口13億人の中国は、単にハイテクの巨大生産基地の役割だけでなく、2002年携帯電話需要で米国を抜きトップへ、そしてパソコン出荷も1000万台を超え、わが国を抜いて世界第2位のハイテク市場へ躍り出た。

 しかし、世界貿易機関(WTO)に加盟した中国は世界の知的所有権を尊重するという観点からは日米欧より強い指弾を受ける。

 世界ハイテク産業は、大きな人口を抱える中国が巨大市場を形成することと同時に、法整備、法遵守を国是とする先進国の仲間入りを期待している。

オープンソースのLinux、エンタープライズ時代に突入

 オープンソースLinuxを搭載したサーバーが、ウェブのフロントエッヂだけの利用から、大企業の大規模システムなどミッションクリティカル分野にも使われるというエンタープライズ時代に入った。

 IT業界の新しい動きの1つに、メーカー独自仕様の支配から脱し、特定メーカーに依存しないオープンスタンダード採用の潮流がある。

 Linuxは実績から、オープンスタンダードのフラッグシップとしての地位も獲得した。次世代期待のウェブアプリケーションは全てオープンスタンダードで構築される見込みだ。
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