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熱い注目を集めるSMB向けCRM市場

2002/11/18 16:37

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

 企業の販売と顧客管理を司るCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)製品は、SAP、シーベル、ピープルソフトなどの主要企業によって、主に大企業向けに開拓されてきた。最近はSMB(Small and Midsize Business=中小企業)市場に向けたCRM製品投入への試みが活発化しており、マイクロソフトも独自の製品投入を計画している。

マイクロソフトが台風の目に

 米国の大手企業は古くから事務処理の電子化を世界に先駆けて進めてきたために、そのほとんどは既に何らかのIT投資を実践している。

 長引く不況のなか、米国大手企業のIT予算は一律に現状維持、更には削減の方向へ向かったままになっている。そのために、ITシステムの刷新や機能強化を提案するIT企業の声に積極的に耳を傾けてくれる大手顧客は少ないのが現状のようだ。

 そこで、販路拡大のための方策を探るIT企業は、円熟化、および膠着化しつつある大手企業に比較すればまだまだIT化の遅れているSMB市場への参入にその活路を見出そうとしている。

 一件ごとの売り上げは小振りにならざるを得ないものの、今後、規模拡大が見込まれるSMB市場へのCRM製品投入は、大手を含めた全てのIT企業にとって直近の攻略対象となっている。

 50-250台のパソコンと100-500人の従業員、および10-50万ドルの年間IT予算をもつ企業、更には、25-49台と50-99人の従業員、および5万ドル以下の年間IT予算をもつ企業のそれぞれが活躍する市場空間をコア・ミッドマーケット、ローワー・ミッドマーケットと定義するマイクロソフトは、この市場空間に特化したCRM製品の投入を昨年に宣言した。

 昨年はグレートプレインズ社を、また今年に入ってナビジョン社を相次いで買収した。これら企業のもつCRM技術を基盤としたマイクロソフトのCRM製品が、来年には市場に投入されるものと見られている。

 これに対するIBMは、自社製CRM製品のSMB市場への投入は一切行わず、関連企業によるCRM製品投入への後方支援に徹する姿勢を表明している。

 元来大企業向けとして開発されてきたDB/2とWebSphere(ウェブスフィア)のSMB市場向け低価格版を提供することで、これらのインフラを利用したCRM製品を開発販売する企業のSMB市場参入を円滑化すると共に、IBM全体の年間広告予算の2割に相当する85億ドルを、今後この市場空間に投入する予定だ。

 これに対するSAPは、トラックによる全米ツアーなどを敢行、市場ごとに最適化されたMySAP.comがSMB市場へも円滑に導入されている現状を強く訴えている。

 新規市場で先行する企業を買収し、その市場における競合候補を消し去ると共にその技術を習得し、より商品価値の高い製品をその市場へ投入することで大きな成果を獲得するというマイクロソフトの手法は、SMB市場へのCRM製品投入という今回の試みでも脈々と受け継がれているようだ。(大平 光)
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