KeyPerson
“カニバリゼーション”すら恐れない
富士通 代表取締役社長CEO
時田隆仁
取材・文/日高彰、大向琴音 撮影/大星直輝
2025/01/13 09:00
週刊BCN 2025年01月13日vol.2044掲載
(取材・文/大向琴音、日高 彰 写真/大星直輝)
結果に対する一喜一憂はない
――Uvanceの売上高が、24年度上期に2000億円を超えました。前年同期比31%増と力強い伸長です。この数字に関してどのように見ていますか。中期経営計画で掲げた数字に対して“オントラック”で来ているということで、一喜一憂はないですね。ただ、しっかりと実績が積み上がっているということは非常にポジティブに受け止めています。それだけUvanceへの理解が顧客や社会に広まって認知度も上がり、必要性を認めていただいていることの表れではないでしょうか。無理な目標を立てたとも思っていないし、楽な目標を立てたとも思っていません。サービスソリューションセグメントの中の(Uvanceの)比率は、25年度に30%を目指しています。いわゆる(受託開発型の)SI一辺倒だったところから、(オファリング型のサービスに)構成が変わってきているということは非常にうれしいです。
――時田社長就任以前の富士通も、オファリング型の事業モデルを志向する発想はあったと思いますが、Uvanceを立ち上げたことによって初めて、ビジネスのかたちがこれほど力強く変わり始めたということでしょうか。
そうですね。Uvanceはブランドとして立ち上げたものではなく、ずっと「事業モデル」だと言い続けてきました。事業モデルそのものが変わっていることを示すためにも、比率が上がっているのは非常にポジティブです。しかし、比率が100%になるかどうかはまた別の話で、そうあるべきかについても非常に注意深く検討しなければいけないと思います。
――1年前のインタビューでは、Horizontal領域の先行は織り込み済みとのお話がありました。今回の決算の中では、Vertical領域が大きく伸びていましたが、大手企業ではHorizontalに相当するシステム基盤の整備はある程度済んだということなのでしょうか。
今回の中期経営計画ではモダナイゼーションを一つの軸としていますが、それが進んだ先、あるいは同時にUvanceのHorizontalがあるわけなので、この領域でのビジネスの余地はまだまだあります。ただ(前年の上期と比べてVerticalの売り上げが)倍ぐらいに成長したことについてはよかったです。一喜一憂しないとは言っても、「あ、意外にいったな」と感じています。
要因としては、20~30ほどのオファリングをそろえたこともあるでしょう。ただ、それらのオファリング全てで満遍なく導入が進んでいるわけではありません。パッケージアプリケーションビジネスにおいて、当社は必ずしも成功モデルが多いわけではないので、収益性や競争力を見定め、きちんと取捨選択をしていく必要があります。品ぞろえをただ増やせばいいということではありません。
――受託開発もオファリングビジネスも、システムを構築するという点は共通です。どこに違いがあるのでしょうか。
受託開発で一番厳しいのは標準化です。共通のプラットフォームという考え方が効かない上、どうしてもリソースを(個別のプロジェクトに)張り付けてしまうので、リソースの割り当ての自由度は大きく違います。もちろん、“ビスポーク(オーダーメイド)”でやったほうがぴったりした服はつくれますが、そこではない価値を訴求しながら増やしていくということです。
前述したように、Verticalの全部の調子がいいわけではないので、そこはしっかりと見ながらやっていかなければなりません。特に今はデータ分析やインテリジェンス、AIを使って業務を手助けすることに関心が集まっています。次なる業務プロセスの革新は、AIが本格的に実装されたときに起きるので、(今は)Verticalの中における準備段階かもしれません。
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