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「規模」と「付加価値」の二軸で成長へ
リョーサン菱洋ホールディングス 代表取締役社長執行役員
中村守孝
取材・文/日高彰 撮影/大星直輝
2024/09/09 09:00
週刊BCN 2024年09月09日vol.2029掲載
(取材・文/日高 彰 写真/大星直輝)
「顧客不在」から「顧客起点」への転換
――菱洋エレクトロの社長に就任されてから6年余りが経過しました。今回の経営統合のお話の前に、これまで菱洋エレクトロで取り組まれてきたことについて振り返ってお聞かせください。最初は2017年に特別顧問として菱洋エレクトロに入りました。それから1年もたたないうちに社長を引き受けることになったわけですが、それだけ本気で手を入れないといけないくらい、会社はすさまじい状態でした。前職がお客様あっての商売である百貨店だった私にとっては信じられないことでしたが、当時の菱洋エレクトロは、いわば「顧客不在」でビジネスをしていました。
――顧客不在というのはどういうことでしょうか。菱洋エレクトロ自体の問題なのか、それとも業界に構造的な問題があったということでしょうか。
両方の側面があると思います。エレクトロニクス商社のビジネスは、どのメーカーから商品を仕入れられるかという「商権」に依存するところが大きく、商権にお客様がセットで付いてくるような部分があります。ですので、もちろん仕入れ先は非常に重要な取引先なのですが、誰がお金を払っているんだということをシンプルに考えれば、それはお客様です。なのに、お客様のほうを向かず、どこの商社が商権を取った取られたといった話ばかりしている。顧客不在で仕入れ先ばかり見て仕事をしている様子を目の当たりにし、これを営業と呼んでいいものかと衝撃を受けました。
そして、みんな我流でバラバラに仕事をしており、組織間の連携がなかった。お客様のために協働して価値を提供していこうという発想がない。10年以上給与は上がっておらず賞与もわずか。改善のためにやっていたことは経費を削ることだけで、付加価値を高める方向の取り組みはありませんでした。組織の風土は荒廃し、社員の目から輝きが失われていました。ですので、業界の構造に起因する面もありますが、当社の経営に問題があったのは明らかでした。
――どのように改革を進めましたか。
就任後、社員全員に向けてメッセージを出しました。いろいろなことを話しましたが、端的に言えば「これまで皆さんに伝わっていなかったかもしれませんが、うちは業界でビリです、この後どうするんですか。今後はお客様と仲間のことだけ考えてください。それで、ある一定の数字を数年内に達成したら、賞与を倍払いますから」ということを打ち出しました。ビジョンを示し、組織を変え、制度を変え、あらゆることを変えました。それこそあいさつの仕方、電話の取り方からたたき直しましたよ。組織を大きく変革する場合、風土をまず改革するか、それとも戦略を変えるか、入り口は二つあると思いますが、今回の場合、後者ではうまくいかないと判断しました。これまで戦略を立ててこなかったわけですから。なのでまずはトップダウンで風土を変革し、顧客主導の事業モデルに変えていくことに取り組んできました。
――途中コロナ禍の影響もありましたが、直近3年の業績は堅調に推移しています。
私がこの会社に来たときはどん底のタイミングでしたが、そのときから比べると20倍くらいの利益が出せる会社になり、賞与の倍増も実現しました。全国の現場に足を運びましたが、そこでトップダウンの呼びかけに応えてくれた社員のおかげだと考えています。ただ、これは社長就任直後のメッセージでも伝えていたのですが、エレクトロニクス商社というこの業界では、先々1社単独で生き残ることはできないとわかっていました。ですからこの6年は、ほかの企業から「一緒にやりたい」と言ってもらえるような会社になるために、体質を変えてきたというところですね。
- 「その他何十社」から抜け出す
- 互いに理想的な補完関係だった
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