KeyPerson
プラットフォームで企業を守る
パロアルトネットワークス 代表取締役会長兼社長
アリイ・ヒロシ
取材・文/岩田晃久 撮影/大星直輝
2024/03/18 09:00
週刊BCN 2024年03月18日vol.2006掲載
(取材・文/岩田晃久 写真/大星直輝)
変わる顧客の意識
――パロアルトネットワークスは次世代ファイアウォール(FW)のイメージが強いですが、現在は多くの製品をそろえています。製品戦略について教えてください。次世代FW、SASE(Secure Access Service Edge)製品の「Prisma SASE」、クラウドセキュリティー製品の「Prisma Cloud」、エンドポイントセキュリティーとオペレーション製品の「Cortex」などを展開しています。お客様は、ネットワーク、クラウド、OT・IoTといったさまざまな環境でセキュリティー強化を求められていますが、製品をそろえることで、当社がお手伝いできる場面が広がっています。そして注力しているのが、プラットフォームによるアプローチで、当社では「Platformization(プラットフォーム化)」という言葉を使い、お客様に提案をしています。セキュリティー対策をプラットフォーム化することで、強固な環境を実現できますし、運用も容易になります。
当社は、次世代FWからスタートした企業です。当時のネットワークセキュリティーは、FW、IPS(侵入防止システム)、URLフィルタリング、サンドボックスといった製品をポイントソリューションとして導入し、対策を行っていました。これらの機能をまとめて次世代FWとして提供した、つまり、FWをプラットフォームとして出したということです。最近になってプラットフォームと言い始めたのではなく、当時からプラットフォームでお客様を守るという方向を示していました。
――保護するポイントごとに最適なメーカーの製品を選択する“ベストオブブリード”の思考でセキュリティー対策を行う企業が多い印象ですが、その意識は変わってきているのでしょうか。
かなり変わってきています。先ほど述べたように、企業は、さまざまな環境のセキュリティーを強化しなければなりませんし、働き方も変わったため、管理するデバイスやアプリケーションも増加しています。それらのセキュリティーの強化を図るにしても、お客様には決まった予算があります。また、あるグローバルの調査では、企業は平均して75のセキュリティーツールを利用しているといった結果が出ており、それを運用していくには人材が必要となります。これらの課題を解決するために、グランドデザインを見直し、プラットフォーム戦略にシフトしていくというお客様が増えています。
米国の場合、セキュリティー侵害を受けてから4日以内にレポートを提出することが求められるため、セキュリティー対策は、Mean Time To Detect(平均検出時間)が重視されます。プラットフォームによるアプローチはMean Time To Detectの短縮にも有効です。
今後はAIを利用するために、バラバラのデータを統合して管理していかなければなりません。その際のセキュリティーも、ポイントソリューションよりプラットフォームによる対策のほうが適していると考えています。また、AIを利用する際のガバナンスや、AI自体のセキュリティーはきちんとしているのかといった課題もありますので、事例をつくったり、お客様とのコミュニケーションを増やしたりして、AIの利活用に関するセキュリティーの提案も進めていきます。
――国内企業でもプラットフォーム型の対策の採用は増えていますか。
以前は、次世代FWを利用しているお客様にプラットフォームを提案しても「セキュリティー対策をパロアルトネットワークスに一本化して任せるわけにはいかない」という声がありました。その後、Prisma CloudやCortexを強化してきたことで、(顧客の)意識が変わり、セキュリティー製品を当社で統一するお客様も増えています。あるお客様の例になりますが、当社からネットワーク、クラウド、エンドポイントおよびオペレーションの営業がそれぞれ提案を行っていましたが、お客様から、「一緒のテーブルに座って3年後、5年後までを見据えたセキュリティー対策を提案してほしい」とおっしゃっていただきました。こういったケースはこれからも増えていくと思います。
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