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デジタル化の遅れを取り戻す
情報処理推進機構 理事長兼デジタルアーキテクチャ・デザインセンター長
齊藤 裕
取材・文/岩田晃久 撮影/大星直輝
2023/07/03 09:00
週刊BCN 2023年07月03日vol.1975掲載
(取材・文/岩田晃久 写真/大星直輝)
政策まで踏み込む
──これまでの経歴を教えてください。大学卒業後、日立製作所に入社し、エンジニアとして鉄鋼やインフラといった分野に携わりました。その後、社内カンパニーである情報制御システム社の社長を経て、日立の副社長と社内カンパニーの情報・通信システム社の社長を務め、日立全体の指揮や構造改革などに取り組みました。18年からは、ファナックに移りIoTを担当しました。こういったさまざまな経験をしているのが私の強みになります。
──20年からIPAの「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)」のセンター長を務めています。どういったことに取り組んできたのでしょうか。
当時、経済産業省が、今後はシステムの観点からさまざまなことを考えていかなければならないとの見解を示し、各産業団体などからも国内のシステム化の遅れが指摘されていました。その中で、システム化を進めるには、アーキテクチャー(異なる事業者間・社会全体でのビッグデータやシステム連携などを可能にする全体の設計図)の設計と、デジタルの世界における協調領域を明確にする必要があったことから、その部分の実現を目指しました。民間からシステムを設計できる人材を集めましたが、アーキテクチャー設計はすぐにできるわけではありません。勉強からのスタートとなり、最初の1年はうまくいかず、さらに時間を増やすなどして取り組みを強化しました。
IPAは経産省の政策実施機関としての一翼を担っている組織です。アーキテクチャーを設計していくには、経産省の各部門との連携が必要となります。DADCはできたばかりの組織だったため、(各部門から)信用を得ることから始めなければならなかったところも難しい点でした。
──4月にIPAの理事長に就任されました。
DADCでアーキテクチャー設計に取り組む中、その先にある標準化を作り、世の中に広め徹底していくといった動きを誰が行うのかを考えたときに、デジタル人材の育成やセキュリティへの取り組みがしっかりとしているIPAがその役割を担うのがよいと考えました。IPAをそういった組織にしていくには、DADCのセンター長だけでなく、理事長まで引き受けなければならないと思ったのが就任の理由です。
デジタル面で国内の状況を見てみると、お金が外国に流れている半面、外貨の獲得は進んでいません。この問題を放置してはいけないため、IPAが政策の部分にも関われるようにしていく必要があると考えています。そこまでつながらないと、日本のデジタル化が完結しませんし、デジタルを活用した産業競争力が確保できないと思います。
民間が政策提言しても、やる人がいないで終わってしまうため、私が民間の意見を取り込み、政策提言を行い、IPAが実行していくという話をしていきます。これを実現するには、強い覚悟と信念が必要ですが、理事長はそれを持たなければいけないと考えています。現在は、民間の人とディスカッションしながら、その意見を行政側に伝えるといった動きを始めています。
──実現に向けたハードルは高いようにも感じます。
今のIPAにそれだけの力があるかと聞かれれば、まだないでしょう。だからこそ、IPAを変えていく必要があります。特に、人材面は重要で、サイバーセキュリティやAIに強い人材、データの分析・解析ができる人材、最適化を図れる人材など幅広くそろえていきたいです。
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