KeyPerson
デジタルでも便利さを提供することが使命
シヤチハタ 代表取締役社長執行役員
舟橋正剛
取材・文/藤岡堯 撮影/大星直輝
2023/05/29 09:00
週刊BCN 2023年05月29日vol.1970掲載
(取材・文/藤岡 堯 写真/大星直輝)
鳴かず飛ばずの歴史
──シヤチハタといえば「はんこ」のイメージですが、1995年には電子印鑑サービスを開始するなど、ITソリューションも早い段階で手掛けているそうですね。デジタルの領域に乗り出した経緯はどのようなものだったのでしょうか。私が入社する前のことで、直接は携わってはいませんが、「Windows 95」のリリースを契機に、紙の上での決裁がPCへと移り変わっていくことへの危機感があったと聞いています。そこで、アスキー・ネットワーク・テクノロジー(当時)と共同でシステムを手作りしたことが始まりです。
そこから世の中の流れに合わせ、OSやデバイスの変化にフィットするように開発を進め、最近ではクラウド、サブスクリプションのサービスに至りました。ただ、ありていに言いますと、95年から新型コロナ禍前までは「鳴かず飛ばず」だったんですよ。年間2億円前後の売り上げで、会社の一事業として、採算的にどうなの、というところは当然ありました。
それでも、アナログで承認にシヤチハタを使っていただいたところに、それがデジタルになったら「シヤチハタはさよなら」になってはだめだと思っていました。デジタルでも「シヤチハタがあって便利だね」と言ってもらえるようにすることが、われわれの使命ということです。
DXといってもデジタルに業務を合わせるのではなく、紙を使っていた業務を、デバイスが変わっても、そのままできるようにすることが根本的な考えです。われわれはIT企業ではないので、そのあたりで差別化を図っています。日本は中小・零細企業が9割以上です。皆さんが(デジタルの)利用を始めるのは、これからですし、わかりやすく提案できるものを伝えたいという思いが今は強いです。
──企業理念にある「便利」「楽しさ」「安心・安全」という価値を提供できるのであれば、はんこという物理的な形である必要はないということでしょうか。
物理的な形である必要がない、と言いますか、物理的な形でなくても提供しなければならないという気持ちです。電子決裁は基本的に、表面的な印が付いていなくとも、書類がセキュアな状態にあることは担保されています。それでも、社内決裁、社外との契約を問わず、誰が確認したかという印が載っていたほうがわかりやすく、仕事もしやすい。お客様から電子認証、電子決裁において「はんこが要らない」という声が多ければ、別の形に変わっていたと思います。とはいえ、まだ可視化できるような印が残っているということは、お客様も使いやすさを感じているということでしょう。
コロナ禍で押印の廃止やはんこ不要という話題が上りました。確かに、不要な場面でもはんこを押しておこうということがあったのだと思います。ですので、本当に不要なところに押す必要はないでしょう。ただ、仕事をする上で、フローを可視化できることは大切ですし、そこにこだわっていくべきだと思っています。
- 細かな対応は「はんこ屋」だからこそ
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