富士通グループでITインフラの構築・運用・保守を手がける富士通エフサスの社長に、富士通で公共ビジネスに携わってきた小林俊範氏が就任した。ITインフラのトレンドはかつてのようなオーダーメードで構築されるものから、クラウドに代表されるサービスの活用へとシフトしつつある。インフラの運用・保守で長年の知見を蓄積した同社が、クラウド時代を勝ち抜く道筋はどこにあるのか、小林新社長に聞いた。
エフサスのCE部隊は
「すごい」存在
――小林社長は富士通本体では公共系の開発に長く携わり、海外勤務を経て2015年にはITインフラの運用を含むアウトソーシングサービスを担当されました。富士通エフサスとの関わりは、そのようなサービス系の事業を見られるようになったころからでしょうか。
いえいえ、そんな最近のことではなく、私が現場のSEをやっているころから、CE(カスタマーエンジニア)部隊とは一体で仕事をすることが多かったです。もともと、中央省庁のシステムを手がけているときはメインフレームが中心の大規模なものでしたので、設置や保守の仕事は、今でいう当社(富士通エフサス)のチームと一緒にやっていました。私はソフトウェアの世界の出身でしたので、ハードウェアの中身を熟知しその場で修理するCEを、いつも「すごいな」と尊敬の目で見ていました。
また、省庁の全国の拠点にPCを1人1台用意するといったプロジェクトも富士通本体と当社とで行っていました。今でこそPCのキッティングは当たり前の仕事になりましたが、当時は設置までで、設定も含めた展開をするような例は少なかったのです。ですので、全国に均一なサービスを提供できるという強みはそのころから感じていました。そして、カスタマーサービス系のビジネスを見るようになってからは、当然ながらデータセンターの運用やクラウドで関わることになりましたので、富士通入社以来、エフサスと私の付き合いが切れたことはありません。
――現在の富士通グループの中で、富士通エフサスはどのような役割を果たす会社なのでしょうか。
一番分かりやすい表現をするならば、「ITインフラサービスを提供する会社」ということになると思います。ただ、昔はメインフレームだったのがオープン系になり、最近ではクラウドへと、インフラは常に変化してきました。ですので一口にインフラといっても、その範囲の解釈は人によって異なるかもしれませんが、とにかく良いインフラを提供することと、お客様に一番近いところでサポートする役割を担う会社であることに変わりはありません。
――ユーザーの視点からすると、ITインフラは今後できるだけコモディティーの製品やサービスを採用し、「お金をかけたくない」領域になっていくおそれはありませんか。
ITに求められるサービスレベルは過去と現在では全く違い、インフラに対する要求はますます高まっています。多くのアプリケーションは昔のように日中の営業時間内だけ動けばいいのではなく、24時間365日稼働し続けないと、ビジネスも社会も成り立ちません。“止まりにくい”ではダメで、“止まらない”設計をどのように実現していくのかという世界です。ですから、インフラを構成する一つ一つのパーツを見ればコモディティー化が進む部分はあると思いますが、インフラのサービスに関しては当社が提供できる価値はむしろ大きくなっていくと考えています。
――インフラに加えて、自社商材の販売も行われていますね。働き方可視化ソリューションの「TIME CREATOR」はヒット商品になりました。
TIME CREATORには、在宅勤務での働き過ぎ防止といった用途でのお問い合わせも多くなっています。ただ、当社としては商材ありきの提案ではなく、オンプレミスからクラウドへという大きな流れの中で、テレワークへの対応も含め、最適なITインフラとは何かをお客様とともに考えていくことが重要だと考えています。そのようなお話に紐づく形で、TIME CREATORのような自社商材を販売していけるといいと思っています。
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