あらためて取り組む
営業・開発の一体化
――VAIO設立6年目で、4代目の社長に就任されたわけですが、ご自身のミッションをどのように捉えていますか。
当社はソニーからの独立以来、それぞれの局面に応じたスキルを持つ人が社長に就いたことで、今の事業基盤ができたと考えています。2代目の大田義実元社長は営業体制の一からの構築、吉田秀俊前社長は製品ラインアップやEMS(製造受託)事業の拡大で、会社を成長軌道に乗せました。私に求められる役割は、この成長をさらに加速させていくことだと考えています。
――数期にわたって営業増益を継続し、事業はいたって好調に見えます。課題は何ですか。
成長の加速に耐えられる基盤をもう一度作る必要があると考えています。それは企業カルチャーの部分まで関係するかもしれません。会社が大きくなると、どうしても営業・マーケティング部門と商品企画・開発部門は構造的に分断していく傾向にあるので、お客様が求めることと、VAIOとして提案したいことをどうやったら最適な形で組み合わせられるかが課題となります。その両方が融合した価値をつくれれば、今までよりもたくさんのいい製品を早くお客様にお届けできるようになり、成長の加速につながると考えています。
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中学生の頃から自転車が趣味。安曇野本社への通勤では、お気に入りの折り畳み自転車を使って松本駅からのサイクリングを楽しむことも。「春の安曇野はまだ経験したことがない」という山本社長、満開の桜の景色に胸を膨らませる。
眼光紙背 ~取材を終えて~
二律背反を超えた先
「大企業のようなビックピクチャーを描き、中小企業のようなスピード感・一体感を持った企業」。数多くの企業のコンサルティングを経験してきた山本社長は、理想的な企業をそう表現する。ソニー時代には数百万台規模で展開された実績をもつVAIOだが、現VAIOは従業員数では中堅・中小の規模であり、ベンチャービジネスの性格が強い。山本社長が理想とする二つの血が流れるブランドだ。一方で、山本社長は「それぞれが持つ悪い面が反映されるのは避けなくてはいけない。そうならないようなカルチャーをつくることが私のミッションだ」と決意もにじませる。二律背反の要素をいかに良い方向へと成り立たせるかが、今後の成長のカギを握る。
PC開発だって二律背反の世界だ。薄くしたければ大きなバッテリは載せられないし、頑丈にしようと思えば重くなる。しかし、ユーザーが求めるのは薄くて軽くて頑丈なうえ長時間駆動。どんなメーカーでもこのトレードオフの間で悩み苦しむ。「これは今までずっとやってきたことだし、これからも乗り越えていかなければいけないこと。大変かもしれないが、絶対にできるはず」。山本社長は燃えている。
プロフィール
山本知弘
(やまもと ちひろ)
1972年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、 三菱総合研究所、富士通総研にてアルゴリズムを用いた最適化、ナレッジ発見・統合の研究開発および企業等への実装に 従事。その後、経営コンサルティング会社に転じ、事業戦略 の策定・実行やM&Aなどのプロジェクトを数多く手掛ける。 2013年に日本産業パートナーズに入社し、投資先企業に取締 役などとして参画。15年8月にVAIO社外取締役に就任。執行 役員副社長を経て19年8月から現職。
会社紹介
2014年、ソニーがPC事業を日本産業パートナーズへ譲渡したことで設立。16年5月期に営業黒字転換を達成。現在は主力のPC事業に加え、受託生産(EMS)事業、ソリューション事業を展開する。本社は長野県安曇野市。売上高は228億5500万円(19年5月期)、従業員数は約250人(18年6月現在)。