デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代とは、即ちデータをいかに経営に有効に生かすかが問われる時代ということでもある。企業の情報システムは、いまやオンプレミスやさまざまなクラウドサービスに分散してデータが配置・蓄積され、DXに取り掛かるにあたっては、データを統合的に活用する土台を整えることが大きな課題として浮上している。ETLツールのベンダーとして25年以上前にビジネスをスタートしたインフォマティカは、そうしたニーズを捉え、データ活用のための統合基盤を提供するプラットフォームベンダーとして大きな成長を遂げている。
就任後、ビジネス規模は4倍に成長
――就任から9年以上が経ち、外資ベンダーの日本法人トップとしては長期政権になりました。
おかげさまで、着実に成長することができたというのが実感ですね。グローバルでもそうですし、私が責任を持っている日本の市場を見ても、入社した2010年当時の状況と比べて売上高はほぼ4倍、社員数も約4倍になっています。
――クラウドまでを含むデータ統合をはじめ、ビッグデータ管理、データ品質の管理やデータのクオリティー改善、マスターデータ管理(MDM)など、ポートフォリオも近年急拡大していますね。
インフォマティカはもともとETLベンダーとして知られていました。これは非常に誇らしいことなんですが、当社は25年間、ずっと同じことをやってきたんです。だからこそ、コアプロダクトの価値を補強することに集中し、ETLの先にデータクオリティー、平たく言うと名寄せやマッチングですが、さらにはMDM、ビッグデータ、クラウドをもつなぐデータマネジメントなどまでポートフォリオを広げることができたんです。そして、うまくツールを有機的につなぎ合わせて一つのプラットフォームに仕立て上げて、プロダクトではなくソリューションとしてお客様に提供しているのがインフォマティカの差別化ポイントだと思っています。
結果として、例えば当社製品の「PowerCenter」は、世界中で売れているETLツールでありながらも、データインテグレーションプラットフォームの一つの重要なキーソリューションというかたちに位置付けが変わってきています。
“汚いデータ”は経営の阻害要因になる
――ソリューションの価値と一口に言っても、それを市場に認知、理解してもらうのは、そう簡単ではないのでは。
おっしゃるとおりで、実はインフォマティカ製品をデータインテグレーションプラットフォームとしてアピールできるようになってきたのは、この5年くらいのことです。私が入社した頃は、まだまだ「インフォマティカってETLツールベンダーでしょ」と言われていたんです。それがこの5年でお客様の意識も大きく変わってきましたね。いくらERPを入れても、いくら最新のハードウェアを入れても、その中を流れるデータが汚いと、結果として経営を向上させる、業務を効率化するというところには行きつかないんです。それが実感を持って理解していただけるようになった気がします。
――吉田社長のSAPでのキャリアを考えれば、ユーザーにも説得力のある説明として受け止められそうですね。
ERPを大規模導入して一周りしても経営がうまくいかないというお客様は正直に申し上げて多かったです。本来、SAP ERPは全体最適に活用して初めて威力を発揮するんですが、SAPで業務ごとの部門最適をやろうとするケースが少なくなかった。これはSAPでの面白くも悲しい体験ですが、ERPを全社導入されたお客様で、営業部門にSAPのCRMを提案してほしいと言われたことがありました。予算を握っているのは営業部門で、お客様の強い部分最適の要望があり、それに応えるために営業部門専用の総勘定元帳を全社のERPとは別に入れたことがあります。
しかし、それではダメで、横串を刺してデータを活用できる仕組みを整える必要があると、5年くらい前からお客様自身が気づき始めたんですね。部門最適をいくらうまくやっても、データが一気通貫で組織間を流れないと全社の経営が上向かないことを学習されたということだと思います。
――例えばBIにデータを集約して分析するだけでは不十分なのでしょうか。
BIというのは、言うなれば化粧のようなものです。化粧の前には洗顔しますし、規則正しい食事や十分な睡眠で身体のコンディションを整えることも大事ですよね。同様に、データも定期的にクレンジングして、マスターもきれいにしておかないと、BIを活用しても意思決定に役立つレポートは作れないんです。それに、さまざまなシステムからバラバラに集約されたデータはその時点でもはや新鮮なデータではありません。だから、統合的なデータインテグレーション、データガバナンスが必要なんです。
[次のページ]パートナー商流100%を目指す